社長:
先生、社宅って、中小企業でも採用していいんですか?
税理士:
もちろんです。中小企業でも採用している会社はたくさんありますよ。
社長:
それって私が社宅を借りてもOKってことですよね?
税理士:
もちろん社長でも大丈夫です。
ただし、社長と社員では取扱いが若干違いますけどね。
社長:
どういうことですか?
社長は威厳を保つために、“大豪邸”に住まなければならないとかですか?
税理士:
・・・・。
ま、まあ、役員や社員に社宅を貸与することは、一般的によくあることです。
会社のために働いているから、その賃料を負担してあげましょうという発想ですよね。
なので社長、つまり役員であっても社員であっても社宅制度の採用はOKとなっています。
社長:
会社が事業をするための賃料、
つまり必要経費的に認めるということですね。
税理士:
大筋そういう感じですね。
しかし、税務上は、
負担してもらった側が「役員」か「社員」かによって、
給与として課税するか否かのラインを決めています。
給与として課税されない金額は、
「役員」と「社員」の場合とも、
1か月当たり一定額の家賃(賃貸料相当額)を受け取っていれば給与として課税されませんが、
「役員」か「社員」かによって、
「賃貸料相当額」がそれぞれ次表のように住宅の区分に応じて異なっています。
税理士:
表を見てわかるように、
「役員」に対する住宅は、
・『小規模な住宅』
・『小規模な住宅以外』
・『豪華社宅』
の3つに区分されています。
先に言っておきますと、社長の言われる“大豪邸”がどんなもんかわかりませんが、
『豪華社宅』に該当すると、あんまりいいことにはなりませんよ。
社長:
わかってますって、センセ。
冗談ですがな。言うてみただけですわ。わっはっはっ。
税理士:
(・・・・なにゆえ関西弁)
ま、それはいいとして、上表において、
「役員」に対する『小規模な住宅』の「賃貸料相当額」と
「社員」に対する住宅の「賃貸料相当額」の算式が同じですよね。
社長:
ホント一緒ですね。
なんでわざわざそんな区分をしているんですか?
税理士:
「役員」に対しては、実質的に役員報酬として源泉徴収課税して、
そこから負担してもらうとういう意図があります。
例えば、家賃が100万円する『豪華社宅』に社長が無償で居住した場合、
賃借人が会社であれば支払家賃として経費になり、
社長は負担せずにすみます。
一方、社長が賃借人として契約すれば、
役員報酬から自ら家賃を支払うことになり、
自ら負担することになりますから、
多くの社長は前者を選択するでしょう。
それを、役員報酬(給与)として課税(源泉徴収)することで、
その不公平を解消しているのです。
社長:
なるほど。
どちらを選択しても結果は一緒ということですね。
税理士:
そういうことになります。
ただし、「役員」で『小規模な住宅』『小規模な住宅以外』の場合は、
固定資産税の課税標準額を基に算出しますので、
「賃貸料相当額」は実際の家賃よりは低くなるケースが散見されます。
また、「社員」の場合は、
「賃貸料相当額」の50%以上を受け取って(社員が負担して)いれば、
給与として課税されませんので、
こちらも実際の家賃よりはさらに低くなります。
社長:
あ、そうなんですね。
計算式がいろいろ出てきてややこしそうだけど、
うまいこと考えればメリットが出てきそうですね。
税理士:
そうですね、「役員」と「社員」ともに、
「賃貸料相当額」 < 実際の家賃、のように設計できれば、
個人が直接賃借人になるより、社宅にした方がメリットがあるといえるでしょう。
なお、「社員」に対する住宅の貸与が、「他から借り受けた住宅」の場合には、
貸主等から固定資産税の課税標準額などを確認し、
「賃貸料相当額」を算出する必要があります。
社長:
“大豪邸”はまたの機会にしておくとして、
取り敢えず、役員・社員の福利厚生含め、考えてみましょうかね。
広島総合税理士法人