今回は、相続税の納税猶予について説明します。
市街地周辺で農業経営をしていますと、
耕作面積が広大であり相続税や贈与税が課税され税額が高額となった場合、
納税できなくて農地を処分することとなり、
相続人が農業経営を続けられなくリスクがあります。
そのために、相続税では、
農業経営を継続することを条件に相続税を猶予する制度が設けられています。
贈与税と異なり、税金の全額が猶予されるわけではありませんが、
通常の計算をした場合の相続税額から各県単位で
国税局長が定めた農業投資価格を基に計算した
相続税額との差額が猶予されます。
この納税猶予の制度は、農地を相続した相続人が死亡するか、
相続税の申告書の提出期限から20年間農業を継続したときに
猶予されていた相続税額が全額免除されますが、
それまでに農業経営を廃止したり、農地の面積の20%以上を売買したり、
農地以外に転用した場合猶予されていた相続税額の全額(利子税を含む。)を
納税することになります。
1 特例を受けるための要件
① 被相続人
イ 死亡の日まで農業を営んでいた個人
ロ 農地等の生前一括贈与をした個人
② 相続人
イ 相続税の申告期限までに農業経営を開始し、引き続き農業経営を行なう個人
ロ 農地等の生前一括贈与を受けた贈与者で贈与税の納税猶予の特例を受けている個人
ハ 農業委員会の証明書
③ 対象となる農地
イ 被相続人が農業の用に供していた農地等で申告期限までに遺産分割されたもの
ロ 農地等の生前一括贈与の特例を適用していた農地
2 特例を受けるための申告手続
① 相続税の期限内申告の提出
② 猶予税額と利子税の合計額に相当する担保の提供が必要となるため、
申告期限までに担保提供書等の提出
③ 申告期限から3年ごとに「継続届出書」の提出
農地の納税猶予を受けるためには以上の要件を満たす必要があります。
免除を受けるためには、
農業相続人の死亡の日か申告期限から20年を経過する日までとなるため、
適用するに当たって農地の所在する地域の開発状況等の検討も必要と思われます。
広島総合税理士法人