2021/07/17 [SAT]
以下の仕送りのケースは、もらった子供に贈与税がかかるでしょうか。
-
別居する大学生の子供へ、生活費として毎月10万円の仕送りをしている。子供は、アルバイトをしている。
-
別居する未婚のサラリーマンである子供へ、毎月10万円の仕送りをしている。
-
別居する既婚のサラリーマンである子供へ、毎月10万円の仕送りをしている。
贈与は、あげる側の「タダであげるよ」という意思表示と、
もらう側の「いただきます」という受諾があれば成立します(民法第549条)。
贈与でもらった側には贈与税のことが問題になります。
親が子へ仕送りすることはよくあることでしょう。
子が学生のケースで普通は贈与や贈与税のことを
意識しないと思いますしそれでいいと思います。
贈与税がかかるのか、それとも、かからないのか。
下の①~③つの順で確認していくようにしてください。
①贈与か否か
②贈与税の非課税財産であるか否か
③暦年贈与か精算贈与か
①贈与か否か
貸付金や立替金など後で返してもらうケースは、
贈与ではありません。
贈与なのか貸し借りなのか、
確認不十分のせいで後でもめることもあります。
口頭でも贈与は成立しますが、
入口の段階で贈与契約書や金銭消費貸借契約書を
作っておけば後のもめ事を回避できるでしょう。
なお、私は仕送りで贈与契約書を作る
ご家庭を見たことはありません。
子どもへの生活費の仕送りは、
契約などなくとも贈与扱いという認識でいいでしょう。
②贈与税の非課税財産であるか否か
夫婦や親子、兄弟姉妹など(扶養義務者(民法877))から
生活費や教育費に充てるために取得した財産は、
贈与税の非課税財産であると定められています
(相続税法第21条の③二、下記参照)。
注意すべきは使い道で、
通常の衣食住及び教育費のほかに充てた場合は
非課税にならない可能性があることを
認識しておくべきです(相続税法基本通達21-3-3~6)。
非課税財産の規定については他に以下のようなものもあります。
・一定の配偶者間の不動産やその取得のための金銭の贈与(相続税法第21条の6)
・一定の信託に基づくもの(相続税法第21条の4)
・租税特別措置法に基づく住宅取得などの資金贈与、先渡しの教育資金贈与
③暦年贈与か精算贈与か
普通は暦年贈与です。
暦年贈与には110万円の基礎控除があります。
先ほどの仕送りが、
親は生活費のつもりで渡していたところ
子はその1/4を貯金していたとしましょう。
子がバイトなどせず収入が無い場合、
その貯金は贈与税の非課税財産にならないとも考えられます。
その上で、貯金額が暦年(同年の1月1日~12月31日)で110万円以下だったら
基礎控除以下ですので贈与税はかからない(申告義務も無し)、
ということになります。
精算贈与の場合、
贈与時点では2,500万円の特別控除額がありますので、
2,500万円に達するまでは贈与税はかからないです。
ですが、必要な手続きや注意点が色々とあります。
この贈与財産は贈与時の金額で
相続時に必ず相続財産に含め相続税計算の中で精算されますので、
ご利用は計画的に使いどころを誤らないようにしてください。
改めて、3つのケースについて想定すべきことをを見てみましょう。
生活費がいくらかかるのかがケースバイケースではありますが、
考え方の参考にして下さい。
- 別居する大学生の子供へ、生活費のつもりで毎月10万円の仕送りをしている。
子供は、アルバイトをしている。
-
生活費として全額使用されていれば非課税財産です。
通常は上記②により非課税財産になること、
いくらか貯金していたとしても
③の暦年110万円の枠で贈与税課税はまずないでしょう。
(余談:アルバイト代の額も様々なため、経済的に困らないほどのアルバイト収入がある上で
仕送りを受けていたらそのご家庭は仕送り額を一度話し合うべきですね。
このときは、贈与税より所得税の扶養親族に該当するかを気にすべきでしょう。)
-
-
別居する未婚のサラリーマンである子供へ、生活費のつもりで毎月10万円の仕送りをしている。
-
サラリーマンとしての収入は学生アルバイトよりも額が大きくかつ安定しているはずです。
親と別居で未婚の前提では、基本的に自分1人の生活費なので、
仕送りが果たして生活費として非課税にできるのかどうかよく金額を
考慮して考えなければならないでしょう。当然貯金をすることも多いでしょう。
その上で、基礎控除を踏まえて贈与税を考えればいいと思います。
-
別居する既婚のサラリーマンである子供へ、生活費のつもりで毎月10万円の仕送りをしている。
-
贈与側には子、子の配偶者、孫に扶養義務があります。
この観点からは子一家の生活費は増えるので、
ケース2よりも非課税財産になる枠も増えますね。
さりとて、子世帯が夫婦共働きであれば生活費の贈与を
受けていたと果たして言えるでしょうか。
明確な規定はありませんが、まずは夫婦で生活費負担をし、
その上で足りない額の贈与を受けたのなら問題ないでしょう。
以下参照
相続税法
(贈与税の非課税財産)
第二十一条の三 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
一 法人からの贈与により取得した財産
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
三 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが贈与により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの
四 所得税法第七十八条第三項(寄附金控除)に規定する特定公益信託(以下この号において「特定公益信託」という。)で学術に関する顕著な貢献を表彰するものとして、若しくは顕著な価値がある学術に関する研究を奨励するものとして財務大臣の指定するものから交付される金品で財務大臣の指定するもの又は学生若しくは生徒に対する学資の支給を行うことを目的とする特定公益信託から交付される金品
五 条例の規定により地方公共団体が精神又は身体に障害のある者に関して実施する共済制度で政令で定めるものに基づいて支給される給付金を受ける権利
六 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)の適用を受ける選挙における公職の候補者が選挙運動に関し贈与により取得した金銭、物品その他の財産上の利益で同法第百八十九条(選挙運動に関する収入及び支出の報告書の提出)の規定による報告がなされたもの
2 第十二条第二項の規定は、前項第三号に掲げる財産について準用する。
相続税法基本通達
(「生活費」の意義)
21の3-3 法第21条の3第1項第2号に規定する「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除く。)をいい、治療費、養育費その他これらに準ずるもの(保険金又は損害賠償金により補てんされる部分の金額を除く。)を含むものとして取り扱うものとする。
(「教育費」の意義」)
21の3-4 法第21条の3第1項第2号に規定する「教育費」とは、被扶養者の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費等をいい、義務教育費に限らないのであるから留意する。
(生活費及び教育費の取扱い)
21の3-5 法第21条の3第1項の規定により生活費又は教育費に充てるためのものとして贈与税の課税価格に算入しない財産は、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産をいうものとする。したがって、生活費又は教育費の名義で取得した財産を預貯金した場合又は株式の買入代金若しくは家屋の買入代金に充当したような場合における当該預貯金又は買入代金等の金額は、通常必要と認められるもの以外のものとして取り扱うものとする。(平15課資2-1改正)
(生活費等で通常必要と認められるもの)
21の3-6 法第21条の3第1項第2号に規定する「通常必要と認められるもの」は、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいうものとする。
広島総合税理士法人