社長:
先生、子どもの給料の件はよくわかりましたが、
私の妻も会社の切り盛りをしてくれているし、
ボーナスを奮発しても問題ありませんよね?
税理士:
社長も凝りませんね!
「経営従事」って聞いたことありませんか?
社長:
「経営従事・・・」ですか?
税理士:
この前に話した「過大な使用人給与の規定」は
親族である使用人に支給する給与が過大の場合に適用する話で、
当然奥さんもその規定にあてはまりますが、
奥さんの場合、「経営に従事している」と認められれば、
法人税法上の役員(「みなし役員」)と判断される可能性があります。
社長:
えっ!「みなし役員・・・」ってことは「役員待遇」?
税理士:
まあ、そのようなものです。
つまり役員として登記等がされていなくても、
法人税法ではあなたは「役員」とみなすということです。
その「みなし役員」を判定する規定に
「経営に従事している者」という要件が付されているのです
法人税法第2条 十五(役員の定義) 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している者のうち政令で定める者をいう。 |
法人税法施行令第7条(役員の範囲) (一)法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る。次号において同じ。)以外の者でその法人の経営に従事しているもの ⇒ 相談役、顧問等 (二)同族会社の使用人のうち、一定の要件を満たしている者(特定株主)で、その会社の経営に従事しているもの |
社長:
何、勝手に「役員」にしてくれてるんですか!
役員にはまだ早い!
税理士:
まあまあ社長落ち着いてください。
奥さんの場合、株主ではありませんが
筆頭株主である社長と合わせて株式所有割合を判定し、
50%を超えるので特定株主に該当します。
その上で、「経営に従事」していれば、
役員とみなされるということになります。
社長:
じゃあ、逆に「経営に従事」していなければ
役員にはみなされないと?
税理士:
そういうことですね。
しかし「経営に従事」といってもどんなものが該当するのか
税法に規定されている訳ではありません。
一般的に、次のようなものを行っている場合など、
総合的に判断することになります。
「経営に従事している」とは?
法人の主要な業務執行の意思決定に参画することをいい、具体的には次のような場合が該当する。 |
|
経営方針に参画して、右のような計画・決定に自己の意思を表明し反映させること |
〇職制の決定 〇販売計画 〇仕入計画 〇製造計画 〇人事計画(任免、給料、賞与の決定) 〇資金計画(借入れの決定、増資の決定) 〇設備計画 など |
(令和2年度 図解法人税 P271)
社長:
税法上の役員になると、どんなメリットがあるんですか?
税理士:
メリットは・・・ないですね。
どちらかと言えば、いろいろ制約されるのでデメリットだらけです。
例えば、役員に関する規定で次のものが適用されます。
役員給与の損金不算入(法34①)、
過大な役員給与の損金不算入(法34②)
隠ぺい仮装により支給する役員給与の損金不算入(法34③)
すなわち、臨時的な給与を支給した場合の
損金不算入や不相当に高額な給与の損金不算入など
通常の役員と同じ扱いを受けるので注意が必要になりますね。
つまり、奥さんが「みなし役員」に該当すれば、
ボーナスは経費にならない損金不算入となるという訳です。
社長:
そうですか。
妻も頑張ってくれているのでボーナスを奮発って
訳にはいかないんですね。
税理士:
そのとおりです。
一般的に親族で経営している会社は
好き勝手できると思われていますし、
実際そういう会社があることも事実ですしね。
みなし役員で網をかけて、
使用人給与で更に網をかけている訳です。
社長:
子どもにも妻にもダメか・・・。
税理士:
「みなし役員」であっても、
事前確定届出給与の届出書を提出しておけば、
実質ボーナスの支給も可能ですから、
事前に「みなし役員」に該当するか検討した上で、
対応すれば問題ありません。
社長:
届出をだすかはまた考えて、
今年の年末は賞与を奮発する代わりに、
ちょっといい旅館にでも連れてってあげましょうかねぇ。
税理士:
家族旅行は福利厚生費じゃなくて
「給料」扱いになりますからね、
気をつけてくださいよ。
社長:
ちゃんと前回教えてもらったんで大丈夫ですよ、先生!
たまには自腹を切らんとバチが当たりますからね。
広島総合税理士法人