「資本金って、いくらがいいの?」
資本金は、会社法で1円からでもOK!
といっても、なんとなく1円という訳にはいかない気がするし、
「資本金は一体いくらがいいのか?」と迷う方もいらっしゃるでしょう。
実際、いくらがいいのでしょうか?
その答えは・・・
今から会社を始めたいとか、資本増強を図りたいとか、社会的信用を得たいとかなど、
その理由や会社の状況によって違います。
ここで税理士らしく、一つの考え方として、
「資本金」の額による、税務上の取扱いについて触れてみましょう。
法人税
法人税の各種税制の中には「中小企業向け」の税制が多く、
ここでいう「中小企業」は、通常「資本金の額が1億円以下の法人」を指しますので、
資本金が1億円以下であれば次のような税制(中小企業の恩典)の適用を受けることができます。
主なものとして、
① 法人税の軽減税率(所得金額800万円以下の部分の税率15%)
② 少額減価償却資産の損金算入(取得価額30万円未満を損金算入)
③ 所得拡大促進税制の税額控除割合(平均給与等支給額が前年度比2%以上増加の場合12%を上乗せ)
④ 中小企業投資促進税制(中小企業者が取得した機械等の特別償却30%)
などがあります。
また、資本金3000万円以下であれば、
上記④の税制では、税額控除7%が選択適用できるなど、
資本金の額によって使える税制(中小企業の恩典)が異なってくるというのが特徴ですね。
(つまり資本金が少ないほど、単純に考えて有利ということになります)
消費税
資本金1000万円未満の事業者は特定新設法人等を除き、
原則として設立1、2期の納税義務が免除されます。
上記取り扱いが、資本金の多寡に係る代表的なもので、
消費税における資本金の影響はあまり多くないという印象です。
監査(番外編)
税制とは趣を異にしますが、
資本金5億円以上(又は負債の部の合計額が200億円以上)の会社については、
会社法上、公認会計士の監査を受けなければならなくなります。
岡山の例の事件(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%
97%E5%8E%9F_(%E4%BC%81%E6%A5%AD))で、
本来、公認会計士の監査を受けなければいけなかった企業が受けておらず、
不適切会計が長年にわたり行われた結果として、
利害関係者に甚大な影響を及ぼしたことから、
現在でも、行政・金融機関を中心に監査対象企業に対して注意の目が向いています。
資本金が5億円を超えるような企業は(ない企業もですが)、
そもそも襟を正して経営をしていく必要があるのでしょうね。
まとめ
ざっと見てきたように、
税制上、資本金は①1000万円、②3000万円、③1億円で線引きされているといえます。
(細かく言えば、5000万円や3億円などでもラインは引かれていますが)
なお、毎年国税庁が発表する「会社標本調査」によると、
資本金1000万円以下の法人数は、
平成18年度の約145万社(全体の55.9%)から
平成28年度の約229万社(全体の85.8%)に増加しており、
会社を設立する際には、資本金を1000万円以下にされる方が増加傾向にあるようです。
これは、最低資本金制度の廃止により会社の設立が容易になったことと、
税制上のメリットを最大限享受できるという理由からでしょう。
最初に述べているように、
資本金の額の最適解は人それぞれ状況に応じて異なりますが、
そこに税制上のメリットも加味しながら、
自らにとっても最も心地よい資本金の額を探り出すのものいいのではないでしょうか。
広島総合税理士法人