令和5年度の税制改正により相続時精算課税制度が改正される事になります。
相続時精算課税制度とは、贈与財産から相続時精算課税の特別控除額を控除した残額に20%の税率を乗じた金額の贈与税を支払い、贈与者が亡くなった時にその贈与財産と相続財産とを合計した価額を基に相続税額を計算し、贈与を受けた時に支払った贈与税額を控除するものです。
この場合の特別控除額は2,500万円(前年以前にこの特別控除を適用した金額がある場合にはその金額を控除した残額)で、適用要件として贈与者は60歳以上の者(父母や祖父母など)で受贈者は20歳以上でかつ、贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人及び孫が対象となります。
今までは相続時精算課税制度は財産が相続税の基礎控除額以下の場合や非上場株式等でこれから評価額の上昇が見込まれる財産(実務的には確実に値上がりするという確証はありませんが・・・)にしか適用するメリットはありませんでした。
それが令和6年から相続時精算課税制度に基礎控除制度が創設(110万円)され、将来相続が発生した場合に、相続税額に加算するのは基礎控除を超える金額だけ加算すればいい事になる予定です。
ちなみに通常の暦年課税制度も基礎控除額が110万円ありますが、相続が発生した場合に、相続税の課税価格に加算するのは基礎控除額以下も含めて加算しなければいけません。
仮に令和6年以降で毎年200万円贈与を7年間実行した場合の暦年課税制度と相続時精算課税制度は下記の表のようになります。(実際の相続年月日は令和13年以降を想定しています。)
(1)暦年課税制度
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令和6年 |
令和7年 |
令和8年 |
令和9年 |
令和10年 |
令和11年 |
令和12年 |
贈与額 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
基礎控除 |
110万円 |
110万円 |
110万円 |
110万円 |
110万円 |
110万円 |
110万円 |
贈与税 |
9万円 |
9万円 |
9万円 |
9万円 |
9万円 |
9万円 |
9万円 |
相続加算 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
(2)相続時精算課税制度
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令和6年 |
令和7年 |
令和8年 |
令和9年 |
令和10年 |
令和11年 |
令和12年 |
贈与額 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
基礎控除 |
110万円 |
110万円 |
110万円 |
110万円 |
110万円 |
110万円 |
110万円 |
特別控除 |
90万円 |
90万円 |
90万円 |
90万円 |
90万円 |
90万円 |
90万円 |
贈与税 |
0円 |
0円 |
0円 |
0円 |
0円 |
0円 |
0円 |
相続加算 |
90万円 |
90万円 |
90万円 |
90万円 |
90万円 |
90万円 |
90万円 |
上記(1)の暦年課税制度では令和6年から令和12年までの7年間で毎年200万円×7年で、1,400万円贈与しましたが相続税の課税価格に加算される金額も1,400万円加算され生前贈与による相続税の節税効果が無いという事になります。
一方で(2)の相続時精算課税制度では令和6年から令和12年までの7年間で同じく1,400万円贈与しましたが、相続税の課税価格に加算されるのは90万×7年で630万円となり770万円減少する事になります。つまり、相続時精算課税制度では基礎控除分相続税の課税価格に加算される金額が節税となります。
今回の事例は相続時精算課税制度がメリットとなるような贈与金額及び贈与期間を設定しましたが、実際には贈与金額及び贈与期間に応じてどちらが有利か変わってきますので色々なシュミレーションが必要となります。
広島総合税理士法人