減価償却資産を圧縮記帳した場合、「少額の減価償却資産」、「一括償却資産」、「少額減価償却資産」の取得価額は、圧縮後の金額で判定するのか?
減価償却資産の取得価額の規定は、法人税法施行令第54条にあり、その第3項において、圧縮記帳により損金の額に算入された金額について、次のように規定されています。
法人税法施行令第54条(減価償却資産の取得価額) 第3項 |
第1項各号に掲げる減価償却資産につき法人税法第42条から第50条までまでの規定(法人税法上の圧縮記帳の規定)により各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額がある場合は、 当該減価償却資産の取得価額から当該損金の額に算入された金額を控除した金額に相当する金額をもって、当該資産の取得価額とみなす。 |
そして、法人税法施行令の次の条文の規定において、法人税法上の圧縮記帳ごとに、圧縮記帳の規定の適用を受けて取得した固定資産の取得価額には、当該圧縮記帳の規定により損金算入された金額を算入しない旨が明記されています。
法令第80条の2第1項 |
国庫補助金等で取得した固定資産等の取得価額 |
法令第83条の3第1項 |
工事負担金で取得した固定資産等の取得価額 |
法令第87条の2第1項 |
保険金等で取得した固定資産等の取得価額 |
法令第92条の2第1項 |
交換により取得した資産の取得価額 |
したがって、法人税法上の圧縮記帳による減額後の価額が取得価額となります。
また、租税特別措置法上の圧縮記帳の場合も、各規定には、法人税法に関する法令の規定を適用する場合には、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額は、当該買換資産の取得価額に算入しないと規定されています。
したがって、租税特別措置法上の圧縮記帳の場合も、圧縮記帳による減額後の価額が取得価額となります。
(1)少額の減価償却資産の取得価額の損金算入(法令133条)
法人税法施行令第133条第1項 |
《10万円未満かどうかを判定する取得価額》 減価償却資産で、取得価額(法人税法施行令第54条第1項各号の規定により計算した取得価額をいう。 次条第1項(一括償却資産の損金算入)において同じ。)が10万円未満であるものを有する場合において・・・取得価額に相当する金額につき損金経理した金額は、所得金額の計算上損金の額に算入する。 |
前述した法人税法施行令第54条第3項、その他圧縮記帳の規定及びこの規定により、圧縮記帳による減額後の価額が10万円未満であれば、少額の減価償却資産とすることができます。
また、租税特別措置法上の圧縮記帳を受けた資産を除くとされていませんので、当該資産も圧縮記帳による減額後の金額で判定します。
(2)一括償却資産の損金算入(法令133条の2)
上記、法令133条1項の規定において、取得価額につき「次条第1項において同じ」とされており、一括償却資産の損金算入を規定した法令133条の2にも準用されます。
したがって、圧縮記帳による減額後の取得価額が20万円未満となった減価償却資産は、一括償却資産とすることができます。
また、租税特別措置法上の圧縮記帳を受けた資産を除くとされていませんので、当該資産も圧縮記帳による減額後の金額で判定します。
(3)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(措法67の5)
租税特別措置法上の圧縮記帳の適用を受けた減価償却資産は、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例から除くとされており重複適用はできません。(措法67の5,措法令39の28②)
しかし、法人税法上の圧縮記帳の適用を受けるものは適用除外されていませんので、法人税法施行令の規定による圧縮記帳による減額後の取得価額が30万円未満となった資産は、適用対象資産とすることができます。
(4)おまけ ⇒ 償却資産税(地方税)の取得価額
地方税法上、償却資産は、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産等とされていますが、「少額の減価償却資産の取得価額の損金算入(法令133①)」と「一括償却資産の損金算入(法令133の2①)」の適用により取得価額の全部又は一部が損金算入される資産は除かれています(地令341四)。
償却資産税の場合の取得価額は、法人税法施行令第54条第1項各号により計算した価額をいうとされているのみで、圧縮記帳についての規定はしていません(地令341四)。
また、固定資産評価基準3章1節六のただし書で、「固定資産税における取得価額の算定においては、その評価の目的が財産課税としての適正な資産価値を求めることにあることから、法人税及び所得税において認められている圧縮記帳は、認めないこととされています。」と記載されています。
したがって、圧縮記帳前の金額が償却資産税の申告する取得価額となります。
広島総合税理士法人