前編では、公益法人・移行法人において会計区分が義務付けされているということを確認しました。
民法34条法人から認定、移行された法人では、内閣府、都道府県の公益認定等委員会からの指導で、公益目的事業や実施事業等を、「公益目的事業のチェックポイントについて」(平成20年4月11日内閣府公益認定等委員会)で留意点とされた、事業区分ごとの公益目的事業のチェックポイントの記載を言葉通りで指導されているところもあり、内訳処理が必要な法人が多数存在しています。最近では会計システムで経理処理される法人がほとんどだとは思いますが、入力ボリュームが大きくなります。
事業費・管理費については、ガイドライン1-7(1)において、以下のように記載されています。
ⅰ事業費:当該法人の事業の目的のために要する費用
ⅱ管理費:法人の事業を管理するため、毎年度経常的に要する費用と区分し、
(管理費の例示)
総会・評議員会・理事会の開催運営費、登記費用、理事・評議員・監事報酬、会計監査人報酬、
(事業費に含むことができる例示)
専務理事等の理事報酬、事業部門の管理者の人件費は、公益目的事業への従事割合に応じて公益目的事業に配賦することができる。管理部門で発生する費用(職員の人件費、事務所の賃借料、光熱水費等は、事業費に算入する可能性のある費用であり、法人の実態に応じて算入する。
ガイドラインでの処理方法を例示したのが、日本公認会計士協会の非営利法人委員会研究資料第4号です。四つの公益目的事業を有する法人の仕訳例を示しました。この処理を示す中で、共通費用の考え方はガイドライン1-7(1)で複数の事業に共通して発生する費用や、事業費と管理費に共通して発生する費用については、合理的な配賦基準を用いて配賦計算を行う必要がある。次の配賦基準が例示されています。
配賦基準 |
適用される共通費用 |
建物面積比 |
地代、家賃、建物減価償却費、建物保険料等 |
職員数比 |
福利厚生費、事務用消耗品費等 |
従事割合 |
給料、賞与、賃金、退職金、理事報酬等 |
使用割合 |
備品減価償却費、コンピューターリース代等 |
配賦割合は毎期見直す場合もあるが、採用している配賦基準は、合理的な理由がある場合を除いて継続して採用する必要があります。これらは、認定申請書のF表の記載そのものとなっています。
この処理で共通費用が処理できない場合を想定して、FAQⅥ-2-③では、
1 事業費と管理費とに関連する費用で配賦することが困難な費用は管理費に配賦すること
ができます。事業費のうち公益目的事業に係る事業費と収益事業等に係る事業費とに関
連する費用で配賦することが困難な費用は、収益事業等に係る事業費に配賦すること
ができます。(認定法施行規則第19条)
2 公益目的事業に係る事業費で各事業に配賦することが困難な費用は、公益目的事業に関する会計の中で「共通」の会計区分を設けて配賦することができます。収益事業等に係る事業費で収益事業とその他の事業とに配賦することが困難な費用は、収益事業にかかる費用に配賦することができます。収益事業又はその他の事業其々において、各事業に配賦することが困難な費用は其々の会計の中で「共通」の会計区分を設けて配賦することができます。
財務三原則の計算のために共通費であっても公益目的事業での、収益事業での、その他事業での区分が適正にできれば問題ありません、となっています。
もっと教えて!公益先生
これらの現状がアンケート(内閣府の平成25年7月実施)の結果あぶりだされたため、
「公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」が、平成27年3月26日公益認定当委員会公益法人の会計に関する研究会より公表されました。この中では、正味財産増減計算書内訳表における法人会計区分の義務付けの緩和が検討されました。
公益目的事業のみを行う法人については、負担軽減策として、法人会計区分の作成を義務付けないことは可能か検討されました。
収益事業等を実施する法人にあっては、その利益が公益目的事業に繰入れられることを担保するため、法人会計区分が必要となります。
廃止すると公益目的事業に繰り入れた利益が公益法人の運営に必要な経常的経費(管理費)に充てられる可能性があり、認定法第18条の趣旨を損なうことになり、不適切となります。しかし、公益目的事業のみを行う法人にあっては、この問題がないため、すべての法人に対して法人会計区分を義務付けることは必ずしも必要ない。
結果として、財務状況から法人会計区分を作成する必要がない場合には、同区分作成に関する業務量を勘案して、同区分の作成を省略できることとする。と変更されました。
広島総合税理士法人