この衝撃的なタイトルの本が静かなブームとなっている。しかもあの高尚な岩波書店のハードカバー(税抜3700円)で登場である。著者はロンドン大学教授のデビッド・グレーバー氏。
ブルシット・ジョブとは、「人のためにならない、なくなっても差し支えない仕事、つまりクソどうでもいい仕事」をいう。著者は近年の所得・資産格差社会のなかで,専門家を称するこのクソどうでもいい仕事が増加しており,これが人間社会のやりがいの阻害を生んでいるということを、事例を交えながらもこれでもかというほど列記されていて,痛快である。
具体的には、人材コンサルタント、コミュニケーション・コーディネーター,広報調査員,財務戦略担当などなどである。最も最悪な例は,「常務取締役広報(のみ)担当」らしい。よく我々が目にする,それほど大きくもない銀行の支店に次長が2人いるのもそうかもしれない。
大学でいうとホテル学部,国際コミュニケーション学部,危機管理学部危機管理学科,マンガ学部,不動産学部とある。
全編でこのブルシット仕事のオンパレードで,税理士とか税務戦略コンサルタントとかがいつでてくるか、はらはらしならが読み進めるとP276にありました。
「税理士-年収12万5000ポンド,給与1ポンドを受け取るごとに推定11.2ポンドの社会的な価値を破壊・・」絶句。
教授曰く,ブルシット・ジョブの判定基準はいたってシンプルである。
つまり,その仕事をしている人に「あなたの仕事は本当に社会の役にたっていますか?」と聞くだけである。少しでも回答に躊躇した人の仕事は,程度の差はあれブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)であるとのこと(笑)。
一方で,社会インフラの中でも本当になくてはならない仕事がコロナ禍で再確認された。病院・介護施設の従事者,宅配便のドライバー,清掃員,食堂の調理人などなど、、、女性の就業率が高く,比較的低賃金長労働時間の職種である。今回のコロナではこの職種の受難が続いている。
よくわからない専門家の断捨離を期待する一方で,税理士業界の社会的価値を考えていきたい。
広島総合税理士法人 岡本 倫明