国税庁の「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と
申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」(令和2年5月29日更新)には、
「賃貸物件のオーナーが賃料の減額を行った場合」(FAQ、P34、問4)の減額による損失は、
3つの条件を満たせば、
実質的には賃借人との取引条件の変更と考えられ、
「寄附金」に該当しないと解説しています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/faq/pdf/faq.pdf
3つの条件のうち「賃料の減額が、賃借人において被害が生じた後、
相当の期間(通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間)内に
行われたものであること」とは、いつまでのことなのでしょうか?
新型コロナウイルスによる日本の状況から判断すると、
色々な終期が思い浮びます。
営業自粛要請による休業期間から通常の営業活動を再開できるようになったとき、
つまり営業自粛要請の解除のときまでなのでしょうか?
それ以外にパっと思いつくのは、
・マスク(アベノ)の配布が完了したときまで、
・GoToトラベルが始まったときまで
・5人以上で会食できるようになったときまで
・新型コロナのワクチン接種がはじまったときまで
・TOKYOオリンピックが開催されたときまで
・ズムスタが満員(入場制限がなくなる)でカープの優勝を祝えるとき(何年か先?いやいや今年でしょ)まで
などなど浮かびます。
世の中が通常に戻るのはこのような状態になることでしょうが、
これらの状況は賃借人の営業活動を直接的に現すものではないので、
これらのタイミングの採用は難しいでしょう。
では、「災害発生後相当の期間」とはいつまでなのか?
この疑問を解くカギとして、
東日本大震災の時に修正された法人税基本通達にある災害時の取扱いが参考になります。
それによると、
「災害を受けた取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間をいう。」
(法人税基本通達9-4-6の2のかっこ書の定義:下記参照)とされ、
休業期間に限らず、
通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間が含まれます。
復旧過程の例として、
「店舗等の損壊によりやむなく仮店舗により営業を行っている場合」があります
(東日本大震災の時のFAQ)。
この考え方に、新型コロナウイルス感染症に当てはめた場合、
飲食店がテイクアウト・デリバリーのみで営業する期間、
店内席数を大幅に減少させて営業する期間、
時短要請により営業時間を短縮して営業する期間なども該当すると思われます。
一方、復旧過程に当たらない例として、
「店舗の営業拠点は復旧したが、被災に伴う取引の中断等を契機として事業規模を縮小し、
債務超過の状態が継続しているような場合」は
「復旧過程にある期間」に当たらない
(復旧過程は終了し通常の営業活動をしていると判断される。)
という国税担当者の通達の解説があります。
これは、債務免除が行われた時点における
①営業活動の規模・態様が災害発生前と異なるというだけでなく、
近々通常の営業活動(災害前のとおりのものという意味ではない)の
再開を予定していることを要求していると思われます。
新型コロナウイルス感染症に当てはめた場合に、
「復旧過程にある期間」に該当しないと思われる例として、
次のようなことが考えられます。
・飲食店がテイクアウト・デリバリーのみに変更し、店内飲食の再開を予定しないで営業する。
・席数減少後の席数を継続して(もとの席数規模に復帰することをやめて)営業する。
・より小規模な店舗に完全移転して店内飲食を再開する。
実際の判断に当たっては、
令和2年から現在まで第1波、第2波、第3波と、
新型コロナウイルス感染症が波打ちながら拡大している状況で、
いつまでが賃借人の「通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間」に当たるのか、
判断が難しい場面が生じることが予想されます。
新型コロナウイルス感染症による被害は、
東日本大震災のように店舗が破壊された場面からの物の再興を主目的とする復旧ではなく、
収束が未知で人の行動が制限される中、
感染症対策をしながら営業しなければならない状況を加味して
「復旧過程にある期間」を判断してもよいのかと思うのですが?
最期に、本件の内容については、多分に個人的見解であることを申し述べておきます。
〔参考〕 (災害の場合の取引先に対する売掛債権の免除等) 法人が、災害を受けた得意先等の取引先(・・・)に対して 既に契約で定められたリース料、貸付利息、割賦販売の係る賦払金等で (注) 2 本文の取扱いは、新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定の適用を受ける
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広島総合税理士法人