昨年6月、国税庁HPに「税務行政デジタルトランスフォーメーション~税務行政の将来像」が公表され、
さらに同年12月「構想の実現に向けた工程表」が追加で公表された。
2本の柱として、
「納税者の利便性の向上」
「調査・徴収の効率化・高度化」
を掲げているが、従前からのテーマである。
まず「納税者の利便性の向上」の方策として、電子申告(e-Tax)のさらなる普及促進である。
利用率は向上しているものの、未だ税理士頼みであり、
いわゆる個人での利用者の多くはIDパスワード方式だろう。
パソコンやスマホに疎い高齢者には難しい。
ましてや、確定申告の事前予約はLINEだという。
今後、年金受給者の確定申告は誰が対応するのだろうか。
カードリーダー不要でマイナンバーカードの読み取りで申告が可能となった。
当然、マイナンバーカードの普及が不可欠である。
給付金受給やマイナポイントで普及を促進しており、
いつの間にか税金に紐付けられる可能性がある。
もちろん、税と社会保障に使用する目的で導入されたものであり、
近い将来には個人の所得は今よりも容易に捕捉されるであろう。
「納税方法」も進んでいる。
ダイレクト納付も徐々に普及しつつあるが、
今後はキャッシュレス決済の普及を見込んでいる。
税金を納めている感があるのは金融機関窓口納付であろうが、
当局としては滞納をさせない方策として、
いつでもどこでもの利便性を重要視しているのだろう。
「調査・徴収の効率化」も興味深い。
内部事務を集中化させて、外務事務(調査徴収)人員を増強させる予定だそうだ。
そのため若手税務職員の指導育成には従前にも増して力をいれているだろう。
調査選定には、AIを駆使したビックデーター分析により行い、
無駄のない調査を行う。
昨年から実地での調査にも、リモート調査を導入している。
理想と現実はギャップがあると思うが、
マイナンバーが普及することにより、さらに効率化されると思う。
税理士の仕事はどうか。
AIにとって代わる業種の筆頭と言われる。
「納税者の利便性の向上」により納税者個人が税理士なしで申告を行う。
申告調整が必要な法人税の申告は残るだろうか。
「調査・徴収の効率化・高度化」により税務調査はどうなるのだろう。
AI化では税務調査における対人折衝や複雑な事実認定はできない。
税理士は代理人として税務当局と対応する。代理業務として残るはずである。
税務調査のAI化だけはならないでほしい。
広島総合税理士法人