指定正味財産の意義等
旧公益法人の不祥事頻発で、公益法人改革が迫られ、その第一が、「公益法人の事業活動の透明性を一層向上させ、寄付者、会員等から受入れた財に対する受託責任を明確にすることを通じて、広く国民に対して理解しやすい会計情報を提供するものでなければならないこと」とされました。
そのための手段として、「貸借対照表の正味財産の部について、寄付者等から受入れた財産に対する法人の受託責任を明確にするため、寄付者等の意思によって特定の目的に使途が制限されている寄付を受入れた部分を指定正味財産として表示する」(公益法人等の指導監督等に関する関係省庁連絡会議申合せ 平成16年 1(2)ウ)という行政指導で、指定正味財産について述べられました。
これを受けた、公益法人会計基準(平成20年)で、寄付金に関して、「指定正味財産の区分について寄付によって受け入れた資産で、寄付者等の意思により当該資産の使途について制約が課されている場合には、当該受け入れた資産の額を、貸借対照表上、指定正味財産の区分に記載するものとする。また、当期中に当該寄付によって受け入れた資産の額は、正味財産増減計算書における指定正味財産増減の部に記載するものとする」(内閣府公益認定等委員会平成21年)( 注6)とされています。
また、補助金等に関して「法人が国又は地方公共団体等から補助金等を受け入れた場合、原則として、その受入額を受取補助金等として指定正味財産増減の部に記載する」(同注13)
こととされています。
使途制約がある寄付金等は、指定正味財産として、使途制約がない資源の流入とは区別して計上されます。
『公益法人会計基準注解』
(注6)指定正味財産の区分について
寄付によって受け入れた資産で、寄付者等の意思により当該資産の使途について 制約が課されている場合には、当該受け入れた資産の額を、貸借対照表上、指定正味財産の区分に記載するものとする。また、当期中に当該寄付によって受け入れた資産の額は、正味財産増減計算書における指定正味財産増減の部に記載するものとする
(注 13)補助金について
法人が国又は地方公共団体等から補助金等を受け入れた場合、原則として、その受入額を受取補助金等として指定正味財産増減の部に記載し、補助金等の目的たる支出が行われるのに応じて当該金額を指定正味財産から一般正味財産に振り替えるものとする。なお、当該事業年度末までに目的たる支出を行うことが予定されている補助金等を受け入れた場合には、その受入額を受取補助金等として一般正味財産増減の部に記載することができる。
ただし、当該補助金等が国又は地方公共団体等の補助金等交付業務を実質的に代行する目的で当該法人に一時的に支払われたものである場合等、当該補助金等を第三者へ交付する義務を負担する場合には、当該補助金等は預り補助金等として処理し、事業年度末における残高を負債の部に記載するものとする。
国・地方公共団体の補助金は、補助金支給要綱に従って、指定されたものに対する支出しか不可能であり、寄付者の意思で、使途が制限された寄付金(指定寄付金)は、補助金と同様の考え方で、指定寄付金とすることが求められました。
「公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」(平成27年3月26日 公益認定等委員会 公益法人の会計に関する研究会)において、使途の制約について、「公益目的事業の○○事業に充当してほしい」や「奨学金事業の奨学金の財源に充当してほしい」と具体的に表現される必要があるものとされました。
会計処理
(注6)に示されていますが、指定正味財産は、指定正味財産増減の部に記載することとなります。このことの意味を、財務三原則から考えると、次のようになります。
公益法人で言われる、財務三原則(収支相償・公益目的事業費率・遊休財産額保有制度)は、一般正味財産増減計算書の経常収益、費用の関係です。
認定法第5条6号で言う、公益目的事業に係る収入が適正な費用を超えないとは、公益目的事業経常費用≧公益目的事業経常収益となります。
つまり、指定正味財産は関係しません。
指定された費用を支出した場合は、一般正味財産増減計算書に、支出に見合う金額が、収入として振り替えられます。収益=費用ですので、収支相償に対してのインパクトはないこととなります。
まさに、指定された使用目的通り支出すれば、その金額が収益計上となりますので、未使用部分は、指定寄付金として、キャリーオーバーされます。
寄付金を得ることで、公益事業の運営は便利になりますので、寄付をいただく場合には、寄付者の方に、寄付申込書等で、使途の特定をしていただくことで、予定外の収入が発生して、収支相償に困らないようにされればと思います。
広島総合税理士法人