トピックス

教えて!相続先生「財産の種類で相続税負担が違うんですか?」

2022/12/05 [MON]

親から財産を相続する場合に、どういう財産で相続すれば相続税が安くなるのかパターン別に検討してみたいと思います。

 

(パターン1)預貯金で相続する方法

 皆さん一番いいと思っているのが預貯金ですね。確かに預貯金はいつでもどんな物や債券等にも変える事が出来ますし、安全性もあります。ただし、仮に1億円の預貯金(こんなにお金があれば嬉しい・・・)は相続税課税対象額となる金額は1億円のままです。つまり時価も当然1億円なので節税メリットは無いという事になります。最近では物の値段が上がりインフレ状態ですが、こういう時には貨幣価値は下落しているという事になり預貯金のデメリットでもあります。

 

(パターン2)上場株式で相続する場合

 上場株式で相続した場合にはどうでしょうか。

まず、上場株式で相続した場合の評価方法ですが、

  • 相続した課税時期の最終価格 
  • 相続した課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額 
  • 相続した課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額 
  • 相続した課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額

の中から最も低い金額で課税されます。つまり、1億円の上場株式は1億円に近い金額で相続税課税対象となり、当然時価の変動で少し安い事はありますが相続税の節税はそんなに期待出来ない事になります。それと、相続税を支払う為に相続した1億円の上場株式を売却した場合にはどうなるのでしょうか。この場合には、親が生前に購入した取得価格を引き継いで所得税や住民税を計算する事になっていますので、仮に親が生前6000万円で購入した上場株式を1億円で相続し、1億円で売却した場合には差額の4,000万円に所得税や住民税が課税される事になりますので注意が必要です。(ただし、所得税や住民税では上場株式を譲渡した場合の特例計算や繰越損失があった場合の通算制度、支払った相続税の取得費加算など特例がありますので詳しい事は税理士等に確認する事をお勧めします)

 

(パターン3)生命保険金で相続する場合

次に生命保険金で相続する場合はどうでしょうか。生命保険金は親と保険会社の契約により支払われるもので親の本来の財産ではありませんが、その経済的価値に着目してみなし相続財産とみなされて相続税が課税されます。(税法にはみなし規定の考え方があり一般の方には理解しがたい内容の部分がありますね・・・)生命保険金で1億円を相続した場合には相続税対象額は1億円ですが相続税法では生命保険金の非課税制度があり、「500万円×法定相続人の数」の金額は受け取った生命保険金から控除してもらう事が出来ます。仮に、相続人が母親と子供2人の3名だった場合には非課税金額は「500万円×3人」で1,500万円は非課税扱いとなり、相続税課税対象額は差額の8,500万円という事になります。また、受取保険金は当然預貯金として相続人口座に振り込まれますのでその後の現金化に伴う所得税や住民税の負担がありません。従って、相続財産としては非課税金額があり節税対策として一定の効果があり、有効な財産承継手段だと思います。

 

(パターン4)不動産で相続する場合

 最後に不動産(土地、建物)で相続する場合ですが、不動産の相続税評価はかなり複雑で専門家でも全てを把握するのは難しい内容です。

 まず、土地については路線価方式と倍率方式の二つの課税方式があり、路線価方式は国税庁が公表する路線価に面した土地を評価する方式で倍率方式は路線価方式以外の土地に対して、固定資産税評価額に各地域ごとに定められた倍率を乗じて評価する方式です。また、建物は固定資産税評価額に評価倍率(1倍)を乗じて評価されます。

 この場合に路線価は時価となる公示地価、基準地価の8割程度と言われ、固定資産税評価額は公示地価の7割程度と言われています。従って、時価が1億円の不動産であっても相続税課税対象額は7,000万円~8,000万円程度となり節税効果も大きく、さらに他人に不動産を賃貸した場合には借地権等の関係もあり評価がかなり下ります。ただし、注意点として不動産は取得の時には登録免許税や不動産取得税、仲介手数料等の諸費用が多額になりますし、保有しているだけでも毎年固定資産税や都市計画税が課税され、売却する場合にも所得税や住民税が課税される事がありますので有効的に利用しないと、諸経費がかさみ、資金繰りが悪化する事にもなりかねません。

 

それぞれ簡単にまとめると次表のようになります。

財産種類 預貯金 上場株式 生命保険金 不動産
内  容 安全性はあるが節税メリットが無くインフレに弱い。 相続時の時価相当で課税されあまり節税メリットが無い。また、売却した時には所得税、住民税負担が発生する事があり注意が必要です。 生命保険金は本来の財産ではないが経済的価値に着目し、みなし相続財産として相続税が課税されるが、相続人の人数に応じて非課税金額があり節税メリットがあります。 不動産は路線価や固定資産税評価額で課税されるので時価の7割から8割程度で課税され、他人に貸せば評価がかなり下ります。ただし、借入などが多いと資金繰り等が問題となる事もあり注意が必要です。

 

それぞれパターン別に相続税節税効果が大きいものや小さいもの、リスクにも差がありますので、自分の財産のバランスを考えてどういう資産をいくらぐらい残すか慎重に判断する事が重要です。

 

広島総合税理士法人