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『特別企画:細田博之衆議議長に聞く』後編

2023/08/29 [TUE]

当事務所の岡本税理士が進行役を務めました『特別企画:細田博之衆議院議長に聞く』の記事が、中国税理士政治連盟の会報『中国税制連』2023年5月号(No.69)に掲載されました。

当HPでも、この記事を前後編に渡って掲載します。

 

・前編はこちら

 

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―――それに付随してなんですけれど、先生のホームページを見て、衆議院のここに「近年では、政府の多岐にわたる施策のチェックを行う国政調査権」というのがありますね。

 

〈細田〉いろいろ報告書も作っているんですよ。(調査書を見せながら)国会というのは地道にいろいろなことを調査する。例えば男女の共同参画の問題とか国葬儀の問題、それから公文書管理の在り方、国家公務員制度の在り方、警察の在り方、こういうのを、やはり地道に分析して報告書を出したりしているんですよ。やはり常に改革していかなきゃいけないからね。

 

―――こういうのは公表されているんですか。

 

〈細田〉基本的には内部向けの資料として作成されています。財政の在り方についても、あるいは児童・生徒の自殺者の数字とか、いじめの状況とか、要するに子ども対策として、どういうことが大事かというようなことも書いてある。行政改革とかね。こういうことも国会の大事な仕事なんですね。

 

―――調査書に目を通されるんですかね

 

〈細田〉そうです。やはり世の中の制度というのは一度作るけれど、だんだん実情に合わなくなるし、不適当な部分がいっぱい出てきますからね。

 

―――そうですね。時代も変わってきますよね。もう一つ、それに付随してなんですけれど、いわゆる議員立法ですよね。行政側から内閣府が出すのと、一方、議員から提案する議員立法ってあるじゃないですか。議員立法って、どれぐらいあるんですか。

 

〈細田〉日本は政府提出の法案が多いんですよ。それは政党がいて、政府提出の法案というのは、あらかじめ政党で議論して、それで政府と与党と調整しまして、今の場合は自民党と公明党が、どっちも総務会という、いわば取締役会で法案を了承する。そうすると、与党が了承して初めて内閣が閣議決定する仕組みにしているんですよ。議院内閣制で、そういう仕組みになっているんです。だから与党が一体化して、政府提出法案が、いわば重要法案の九割ぐらい占める。

 昨年は政府提出法案は八十三本で八十二本が成立し、そのうち議員立法は二十三本成立しています。しかし実情は議員が発想して、こういう法案を作ろうといって進めて、具体的には政府のほうで案を作ってということが多いんですよ。

 

 

 一例は、中国地方でも芸備線とか伯備線とか木次線とか山口線とか、さまざまな鉄道があるでしょ。あるいは私鉄もある。本当にお客が少なくなって、今、非常に因っているからね。でも維持するために地方自治体と鉄道会社、JR西日本とかが、この線をなんとかしたいということになったら、提案をして協議をして、そして一定の補助も地方公共団体に出すことができる、そういう法律を今度の国会で審議しているんですよ。地方公共交通の整備の法律が提案されました。

 それも党が中心になって、いろいろ議論して、政府も国土交通省、鉄道局が知恵を出して、そうすると法案ができて、法案の骨子は内閣法制局で審査して、それで条文を作り上げて、自民党が了承する、公明党が了承する、そして必要なものは野党にも説明する。そしていいねということになったら、閣議決定して法案が提出される。本会議で議論して質疑をして、また国土交通委員会で審議をして、それで衆議院を通し、必要があれば修正する、附帯決議を付ける、参議院でも同じことをする。大体そういう形が基本なんですよ。

 

―――議院内閣制の理想型ですね 。

 

〈細田〉そう。だから今、政府と各政党、それから国会が、うまくリンクして機能しているんですね。それだけではなくて議員立法が、どうしてもこれは政府が出せない法律だけれど議員立法しようというのも幾つか成立しているんですよね。大体、今八対二ぐらいかな。

 例えば私が作った議員立法で、人口急減対策の法律がある。例えば広島県だって田舎がたくさんあるでしょ、人口減るでしょ、そこに特定地域づくり事業協同組合というのを作って人を雇う。これは議員立法じゃなきゃできないんですよ。だけれど、それを作って、島根県は今、かなりの市町村で、人を雇うのに建設業だとか農業だとか漁業だとかで雇うのは、今、大変だから。だから地域おこし組合で雇って、農業に派遣して、または製造業に派遣して、新しい従事者とか、地方に住む人を増やそうと。そういう議員立法に甚づいて数百人の人がI ターンU ターンで、各地方で働いている。そういう議員立法もたくさんありますね。

 

―――各国でも議員立法による法律制定・改正が一般的になっているのでしょうか 。

 

〈細田〉アメリカなどは、ほとんど議員立法ですから。ただ、アメリカと違うのは、アメリカはどんな法案でも政党に縛られずに、自分が賛成のものは賛成、反対のものは反対できるという制度で、議員の独立性がものすごくある。

 日本は勝手に、自民党が賛成しているのに本会議で反対したり、そういうことが許されない。その代わり、もし異論があるなら、あらかじめ自分で党の議論のときに参加して、なぜ反対か主張しなさいよと。その代わり、党で決まったら全部そのとおり従いなさいという議院内閣制になっている。

 だからアメリカだって、例えば銃を規制しろというのは、なかなか通らないでしょ。銃社会で銃を用いた殺人事件が起こる。だから銃は全面的にやめろと言う人が多いように見えるけれど、やはりそれは丸腰になったら、泥棒のほうが銃を持って入ってくるのに、それを防げないじゃないかという議論で、通らないわけですよ。なぜ通らないかというと、党で決められない。

 それから妊娠中絶も同じなんですよ。中絶というのはカトリック系の人は、みんな絶対反対だから、中絶は殺人であるということで、犯罪であるという考えで、州によって違うんだけれど、決して中絶をしてはならない。中絶してもいいようにしようという法律を通そうとすると絶対通らないわけですよ。それは各党で決められないからね。

 

 

―――党議拘束があるんですね 。

 

〈細田〉だから、それでなかなか困るのは、今度はLGBT法案とか、男性同士や女性同士でも婚姻届を出したら、それで婚姻は成立するとしようというと、それに違和感があるって人と、それから、男性同士、女性同士が一緒に暮らして、それを結婚であるという、自由でいいじゃないのという人とに分かれちゃって、これは、なかなか自由投票ってわけにいかない。自由投票を今までにしたのは臓器移植法。

 臓器移植法って平成九年に制定され、河野(河野洋平)議長さんのときに改正が行われました。河野議長さんは河野太郎さんから肝臓移植を受けているんだけれど、そうしないと彼は命が危ないところだったわけですよ。一方で、臓器移植は脳死という、実際生きてはいるんだけれど全く意識がない、脳も動いていないという人から、臓器を生きている人に渡すと、心臓移植とか肝臓移植、それを認めようというときにもめて、結局、自由投票にしたんですよ。自由投票で認めましょうと。いろいろな条件を付けて、それで通った。それは例外。

 党議拘束をかけない法案というのは、今までほとんどないです。その臓器移植法が典型的な例だったね。そうしないと党の秩序が保たれない。だから政府が、総理大臣がやりたいと言った、内閣がやると言っていた法案を、議員がみんな、わしは反対だと言って反対していたらもう収拾がつかない。

 

―――最後に全国には、八万人を超える税理士がいるんですけれども、先生から見てどのような存在でしょうか?

 

〈細田〉税理士さんは、もう大変な役割になっていますからね、私も自分の所得税の申告をお願いしてます。それから中小企業も含めた、各企業も、やはり税理士さんの専門的なご活躍がなきゃ駄目だし、デジタルトランスフォーメーションの時代に、どんどん制度が複雑になるばかりです。又、相続税に絡んだって、今回、随分改正が行われているでしょ。専門性があるわけだから、ぜひこれからもご活躍いただきたいと思っていますし、その役割は極めて大きいと思います。

 つまり、もうデジタル の時代になるってことは、専門家じゃなければ、なかなか分からない時代になっていくわけだからね。だから、それに対応するのも、税理士さんも大変だと思います。

 医療費控除とか、マイナンバーも、もっとうまく使ってもらいたいと思うし、それから法人の場合も、インボイスの制度も含めて、本当に対応が大変ですよね。一応、税理士会との間で中小企業に過大な負担にならない案をつくって、これならよろしゅうございますっていうことになっていますが、実際の中小企業にとってみたら大変なことでしょう。こんな細かいことまで税理士さんにお願いするのは悪いなと思うけれど、専門家にお願いする方がよい。所得税や法人税、消費税のインボイスも同じことです。

 

―――ありがとうございます 。会長 、最後に一言お願いします。

 

〈会長〉我々、毎年、先生方に税制改正要望をお願いしているんですが、実際は我々の一丁目一番地の事業というのは、我々の会員に政治意識を高揚させようという事業をすることです。先生方には税制改正しか、なかなかお尋ねしたりお願いする機会がないということで、政治家の皆さんがどういうことを思って、どういう考えで政治なり行政をどのようにされているのかということを、我々の会員に知らせたいと思います。

 こういう企画をやって、今日お聞きしたことを皆さんに政治をよく理解していただくために、会報を通じまして、広報したいと思っております。本日は、お忙しい中どうもありがとうございました。

 

 

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広島総合税理士法人