令和5年度の税制改正による、相続税及び贈与税の改正のあらましを説明します。
1 贈与税の課税方法
贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、
同じ贈与者からの贈与はいずれか1つの課税方法を選択することとなります。
暦年課税は、1年間に贈与を受けた財産の合計額から
贈与税の基礎控除額(110万円)を控除した残額に課税する方法です。
相続時精算課税は、贈与を受けたときに、
特別控除額(2,500万円)及び一定の税率(20%)で贈与税を納付し、
贈与者が亡くなったときに、
その贈与財産と相続財産とを合計した価額を基に相続税額を計算し、
既に支払った贈与税額を控除する方法です。
なお、一度「相続時精算課税」を選択すると、
その後、同じ贈与者からの贈与について「暦年課税」へ
変更することはできません。
2 改正のあらまし
相続時精算課税制度について、次の改正が行われました。
(1)相続時精算課税を選択した受贈者は、特定贈与者ごとに、
1年間に贈与により取得した財産の合計額から、
新たに基礎控除額(110万円)を控除できることとなるとともに、
特定贈与者の死亡により相続税の課税価格に加算される価額は、
上記の基礎控除額を控除した残額となります。
(2)相続時精算課税適用者が、
特定贈与者から贈与により取得した土地又は建物について、
その贈与の日から特定贈与者の死亡に係る
相続税の申告書の提出期限までの間に災害によって
一定の被害を受けた場合には、
その相続税の課税価格への加算の基礎となる
その土地又は建物の価額は、その贈与の時における価額から、
その災害による被災価額を控除した残額とすることができます。
(3)暦年課税制度について、次の改正が行われました。
相続又は遺贈により財産を取得した方が、
その相続開始前7年以内(改正前は3年以内)に
その相続に係る被相続人から暦年課税による贈与により
財産を取得したことがある場合には、
その贈与により取得した財産の価額
(その財産のうち相続開始3年以内に贈与により
取得した財産以外の財産については、
その価額の合計額から100万円を控除した残額)を
相続税の課税価格に加算することとされました。
(4)上記の改正は、令和6年1月1日以後の贈与、
災害に係る相続税又は贈与税について適用されます。
3 令和6年1月1日以後の贈与についての課税方法の適用について
従来、相続時精算課税贈与をした場合は、
贈与した全ての財産を相続税の課税価格へ加算していましたが、
上記2の⑴のとおり、加算する価額は基礎控除額(110万円)を
控除した残額とされました。
一方で、暦年課税贈与をした場合は、
相続開始前7年間(改正前は3年間)の贈与について
相続税の課税価格へ加算することとされました。
以上のことから、令和6年1月1日以後の贈与については、
一般的には、暦年課税贈与よりは相続時精算課税贈与の方が、
税負担が軽くなるといえます。
広島総合税理士法人