新聞等の報道でご存じの方もおられると思いますが、都道府県が資本金1億円超の企業に課している外形標準課税について新たな指標を追加する方向です。
総務省が10月12日に行われた有識者検討会議「地方法人課税に関する検討会第7回」の審議経過を公表しました。11月までに細部を詰めて、年末の税制改正大綱に反映させる方針とのことです。
新たな指標としては「資本金と資本剰余金の合計額」が有力になっています。(詳しいことを知りたい人は総務省のHPで検討内容が公開されていますのでご覧ください。)
外形標準課税の対象法人数は平成18年度から令和2年度にかけて3分の2に減少しており、その背景としては平成13年の商法改正、平成17年の会社法制定を経て、資本金制度の柔軟化、減資手続きの緩和が進んでいることも挙げられます。対象法人数の減少に関して調査したところ、様々な減少要因のうち「減資によるもの」が多いとの結果でした。
また、資本金1億円以下への減資では、株主資本に影響を及ぼさない無償減資が多く、特に、財務会計上、資本金から資本剰余金へ項目振替を行う事例が多いとして指摘されています。
分析で把握されたような減資・組織再編の事例が今後も生じることは、外形標準課税制度の意義・経緯・役割から見て、公平性・税収の安定性が損なわれる事態が懸念され、制度的な検討することが昨年の「令和5年度税制改正大綱」に盛り込まれていました。
その対応策として、小規模な企業への影響に配慮するとともに必要以上に多くの法人に制度見直しの影響が及ばないよう、現行基準(資本金1億円超の法人)を基本的に維持しつつ、公平性の観点から減資・組織再編の動きに対応するための追加的基準を付け加えることが考えられます。
検討会ではいろいろな基準のうち、「減資における資本金を資本剰余金に振り替える項目振替型減資への対応」を中心として検討すべきだとの結論に至ったことで、前述のような「資本金と資本剰余金の合計額」が一定額を超えた場合を課税対象とする案が有力候補になったようです。
「一定額をいくらにするか?いつから実施するか?」の論点について現状では明らかにされていませんが、年末までには詳細が決まるでしょう。
この議論は現状では外形標準課税としての議論にとどまっていますが、今後は法人税の範疇において「中小法人」の範囲をどうするかの議論に波及する可能性があります。会社規模の区分をどうしていくかについての議論の動向に注意しておく必要があると思います。
広島総合税理士法人