当事務所の岡本税理士が進行役を務めました『特別企画:片山さつき参議院議員に聞く』の記事が、中国税理士政治連盟の会報『中国税制連』2024年5月号(No.72)に掲載されました。
当HPでも、この記事を4回に渡って掲載します。
・第1回
・第2回
・第3回
・第4回
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令和六年三月十八日 (月)、中国税政連広報委員会は、第四次安倍改造内閣において唯一の女性閣僚として地方創生、規制改革、女性活躍推進など八分野の政策を担当され、現在も幅広い分野で活躍されている片山さつき議員(参議院比例区) へのインタビューをお願いした。予定の日時に急遽参議院予算委員会の代表質問を担当されることになるなど、多忙を極められている中でありながら、こちらの用意した質問に対して明瞭かつ丁寧にご回答いただくとともに、今般の金融情勢や税理士への期待等についてお聞きした。
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──毎年本連盟の機関誌新年号にご寄稿をいただきありがとうございます。また、本日は五月号の特別企画としてお忙しい中インタビューのお時間を作っていただき感謝申し上げます。政権を支えるため多岐に亘ってご活躍されていらっしゃる先生の生の声を、誌面を通じて会員に伝えたいと思います。よろしくお願いいたします。
〈片山〉 こちらこそよろしくお願いします。早速、経済政策に関してお話します。既に報道されていますが、 三月十八日に総理も私の国会質問に答えて「今世紀前半には十分に日本のGDP 千兆円を目指せる。」とはっきり言ってくださいました。これは政府の経済財政諮問会議でも、インフレが進みつつある中で、名目成長率を三%としているため、毎年三%となると二〇四一年にはGDP千二十一兆円となります この前に出たばかりの(本年の)GDPは前の年の数値が悪かったのですごく良くなってしまい、五%台でこの率で進んでいくともっと千兆円の達成が早くなります。
要するにインフレの経済でインフレをコントロールしながら経営していけば、そのぐらいにはなるということですね。みんな「えっ?」と反応するのですけど、計算すればその数字は出てきて、途中の二〇三〇年位のところでも八百兆円台という数字を内閣府が出しています。だけどそれをあらためて言われると、ちょっとびっくりするとマスコミさんも言っていました。デフレから脱して巡航経済になることがいかに凄いことかということで、その意味では岸田総理はものすごく頑張られました。
──今日午前中の予算委員会の代表質問の中にNISAの件がありました。先生のご発言で、国民の皆さんにも知識を持ってもらわなければいけないという話が出てきたと思います。また、金融経済教育推進機構について触れられていましたが、先生としては具体的にどのようなことをお考えですか。
〈片山〉 これは昨年秋の臨時国会の「金融サービスへの提供利用環境整備法」の改正により、本年四月に設立され八月に本格稼働する公的機関です。昔から日本は日銀や各種の貯蓄金融機関、 つまり銀行や信金・信組で貯蓄広報委員会を作っていました。これはみなさんが貯蓄をして、住宅ローンを借りて、健全な家計生活を送るためのもので、団塊世代の方が小・中学校の頃に、地域によっては講堂に集まってその話を聞いたことがあるそうです。逆に貯蓄投資の教育は一切してきていないです。だから国民の七~八割は株を持っておらず、持っているとしたら年金運用で持っているのです。
年金は国内株と国外株で割合が決まっており三・五%位で回っていて、 それでも低いと言われていますけど昔はもっと低かったです。だからアメリカみたいに生涯勤め終えて退職したときに、日本円で計算するとアメリカ人はインディビジュアル・リタイアメント・アカウントというもので四千六百万円位持っています。それのほとんどが株運用です。これが四千六百万円になっている国と、 日本人の場合は退職したときの資産が大体千八百万円、 二千万円あるかないかです。これは全然違うじゃないですか。向こうは国民皆年金ではありませんが、年金以前の状態で資産がこれだけ違うと老後の安心度が全然違います。
だから資産所得で儲ける国に移行しないと、 日本みたいに経済だけ成熟してきた国はだめじゃないかということで、資産所得倍増計画を打ち出しました。 みんな本当かなと思っていたら、 三年目となった岸田政権で狙った効果の半分位は出てきていて、NISAの口数が、我々が税制の議論をしはじめた頃の千八百万口座だったのが、どんどん年末に増えて二千百万口座位になりました。
去年の一か月平均と今年の一、二月の月次で三倍違います。これは日本証券業協会が取った数字で三倍から三・数倍です。それでそこに流れ込んでくる投資信託のお金の流れ込み方も五倍から六倍違い、どこかに置いておいた自分の資金を投じているということなので、明らかに貯蓄から証券になっています。その程度のことではあれど、その狙いは老後の資産運用が単なる固定金利、あるいは預金金利を越えたものになるということなので、それはアメリカやイギリス、銀行の強いドイツでさえ、大体そうなっています。アメリカもそろそろではないかということではあります。
NISAの場合は千八百万円までの残高維持であれば一生涯、税金がかからない。毎年は百二十万円の積み立て、月十万円で十二か月までで、それをずっと続けていたら十年で千二百万円、十五年で千八百万円で使いきりですが。こっちはこっちで成長投資枠で毎年二百四十万円位買っていたら七年半位で使い切るわけですけど、今までと比べれば大きいので、「それじゃあちょっと株を始めるのならここから入ろう」と考える人は、まったく株をやっていなかった人は別として、リスクがなくて払う税金だけ安いので気持ちが動きますよね。
問題はここからですが、その流れを作ったということでは岸田総理の功績は偉大だったと思います。私が一九八六年に証券局係長になった時の上司が岸田総理のおじさんの岸田俊輔さんで証券局長でした。その方のカバン持ちで、ブラックマンデー等があったのですが「日本株は大丈夫です」と政治家の所を回っていたのは私なんですよ。だからすごくご縁を感じます。
──国民ひとり一人が自ら証券の勉強をやらなければならないということですね。
〈片山〉 そうですね。やっていただければいただくほど、例えばどれを選ぶかというときに自信も持てるだろうし、納得もできるだろうし。それだけでは危ないなという思いに備え、金融経済教育推進機構で中立アドバイザーを認定していきます。様々な株のアドバイザーというのは必ず後ろに証券会社や銀行が付いていて「買ってくれ、買ってくれ」になっているのではないかという疑念を感じますが、ここの人の発言やネットで書いたりしたことは中立的だと思えれば自信が持てます。そういった意味で作った機構です。
──それは新しい資格なのですか?
〈片山〉 認定するのは新しい資格です。機構も新しい機構で、法律として秋の国会で通ったばかりです。
──我々税理士会にも関連団体に租税教育推進協議会というものがあります。そこで租税教育などをやっていますけど、それと同じようなものでしようかね。
〈片山〉 そうですね。だから税制ですから、要するにNISAは、普通にただ株を買っても何も優遇のない時に比べて税金が安くなる制度ですから。むしろ税理士さんに頑張っていただいて、税理士でかつFPという資格をお持ちであれば、当然認定アドバイザーなどになっていく人も出てくるでしょうし、しかも中立的で金融機関の職員でもないため信頼度は高いと思われます。
──株が爆発的に上がっている要因はNISAが増えているというのもあるのかと思います。
〈片山〉 そうは言っても、民主党時代に七千円にまで落ちた株が安倍総理になって二万円台になったのですが、ここから先日四万円になって、一九八九年以来三六年ぶりに三万八千九百円を抜いたじゃないですか。私がよく言うのは、私が証券局にいたころ採用が決まった人が翌年に新人で入ってきました。その人が今は金融庁の総合政策局長なんです。その人に聞いたら「八〇年は三万八千円。次の年の九〇年には四万円、五万円になるかと思っていたら、そこからずっと落ち続けてしまった。」と嘆いていました。
これは今話題になっている日銀の金融政策なんです さらに八九年には日銀マンの典型みたいな物価抑え込みの 「平成の鬼平」 三重野日銀総裁になってしまって、もう少し見ていればいいのに早めに金利をどんどん引き上げていきました。 そして株価がおかしいな、金融が全部逆回りしていて、これは大変な倒産ラッシュになるなと思った一九九一、九二年にも金利を下げなかったのです。それは日本だけではなくFRBとか欧州中央銀行も失敗の例として検証しています。
だから私も今日の国会答弁で、日銀の金融政策に対して、今は政策決定会合中だから誰も答えが言えないので質間しなかったのですけど、私の意見として言ったのですが「あの愚をやったら立ち直れないよ。だからこれから出てくるコロナのゼロゼロ融資の出口ですね。みなさまのお客様やあるいは住宅ローン。これは短期だから多少は動くと思うけれども、固定金利には響かないようにとか、日銀総裁がしょっちゅう仰っているように、短期のマイナス誘導はしないけれどもゼロ誘導くらいにして、国債の買い入れもある程度やって、緩和的な基調を維持するということは絶対にしなければだめだよ。」 と、今日も私ははっきりと申し上げました。
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(中国税制連』2024年5月号(No.72)『特別企画:片山さつき参議院議員に聞く』より)
②へ続く
広島総合税理士法人