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『特別企画:片山さつき参議院議員に聞く』③

2024/06/07 [FRI]

当事務所の岡本税理士が進行役を務めました『特別企画:片山さつき参議院議員に聞く』の記事が、中国税理士政治連盟の会報『中国税制連』2024年5月号(No.72)に掲載されました。

当HPでも、この記事を4回に渡って掲載します。

第1回

第2回

・第3回

第4回

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税制改正大網について

 

──それでは、令和六年度の税制改正の大綱に関しまして、 一番苦労されたところをお聞きかせください。

 

〈片山〉 苦労というほどのことはないのですが、まず、先に決まってしまった所得税・住民税の定額減税については本当にこれでいいのかということです。過去、橋本政権もそれを言い出してから苦しくなってしまいました。

 日本の場合は税制事務を年末調整や六月調整など企業の調整でやっています。企業は嫌がるから、景気を今支えるのであれば給付金を配った方がいいのかなという意見がありましたが、先に官邸が所得税減税を言ってしまったので、 私たちは何も言えなかったのです。「やり方をどうしますか?」というような事しか言えなくて。あとは不公平感があるといけないので、 十万円もらえそうな低所得者より少し上の層、所得税額が少なくて四万円引ききれない人とかに細かく対応すべきと言ったら、そういう制度になったのですが、今度は自治体が苦労してしまって、給付は四月以降のところが多いですね。

 五万円追加給付等はやろうと思えばできるのですが、 計算が大変だったりしているので、 ほとんどのところ大都市の政令市は三月に決めて四月以降の給付が多いです。東京都内もそうです。税制も三月末に決まってから六月施行です。だから逆に言うと、今物価が上かりつつあるところだから結果的にいい時期になったかもしれないけれど、その時は「これでいいの?」とみんな言っていました。「もう少し早く相談してくれない?」という感想です。

 

──官邸ということは岸田総理が先にということですか?

 

〈片山〉 岸田総理というか、総理に誰がアドバイスしたのかよくわからないのです。あとは我々国会議員が対象にならないように、合計所得金額が二千万円以上は適用を止めましようということにしました。

 

──先に官邸が発言したことに沿って、これでいいのかということですか。

 

〈片山〉 もっと早くに相談していれば、さらにウケのいいものにするために、 私たちがもうちょっと働けたかなと思います。それから、心配されていたのは住宅着工が弱含んでいたんです。今もそんなに良くはありません。

 四つとか六つの戸建ての住宅を小さい敷地で建てるじゃないですか。本当に条件のいいところ以外は、東京近辺の交通一時間地帯や五十分地帯ではもうやっていないですし、名古屋近辺でもそうなんです。ローン金利の先高感もあるのでしょうけれどそれだけではなくて、ちょっと飽和してきているかなと感じます。また、資材が高いから値段が高くなり過ぎてしまっているということもあります。

 さらに、働き方改革を受けて人件費も上がっています。それを家の価格に転嫁させると四千何百万円になる。庶民には四千何百万円では買えないから住宅ローンを何とか据え置いてくれと大運動をして、それはほとんど通りました。ただ、条件がついてしまって 「子育て世代だから五千万円ね」とか「ゼロエミッションハウスだから四千五百万円ね」とか「省エネだから四千万円」とか条件になりました。ただ、住宅を新築する人はどちらかが四十歳以下か、子育て中の方で九割以上を占めていらっしゃるので、そこに該当するという感じです。

 

 

──もともと流れを見た時に、住宅ローン控除は引き下げの傾向にありました。

 

〈片山〉 あれは特例で一年とか今回だけだったわけです。縮小傾向にあったのが、何とか首の皮一枚で引き止められました。また、同じようなところでは、私は宅建の政治連盟の推薦議員でもあるのですが、宅建が言ってきたのは皆さんが一番苦労した固定資産税の負担調整です。これもそのまま維持されたのですが、普通は無いことなんです。

 

──それは延長はないという前提だったのですか。

 

〈片山〉 それはそうですよ。特例中の特例でから。しかもそれは我々の見方の中では、総務族・自治族の人は固定資産税に跳ねるから、景気は良くしたいけど反対、という人が多いわけです。それが、反対派が鉾を収めたということは、岸田総理と宮澤さんのタッグがあったのではないでしょうか。普段だったら宮澤さんは延長に反対と言いそうですから。でもそれは評判が悪いから。実際にこの状況でもろに税金が上がりますから。日本人は地主をやっている方が多いので。だから皆さんのお客様にも言っておいてほしいのは、「上がらないところがほとんどなのは何故だか知っていますか」と言ったら、「我々税調もがんばって、みなさんも要求してこうなったのでこの程度ですよ」 ということは是非お伝え願いたいです。固定資産税は結構ハードル高いですから。

 あとは賃上げ促進税制ですが、これはどのくらい使われているのでしようか  「中小企業は繰り越しがないため、七~八割は赤字だから意味がない」とずっと言われていたのが、賃上げ率の要件の一 ・五%、 二・五%というのは「物価スライドで普通にやっている」とさんざん税制当局に言われたのですが、この引き上げ要件はそのままにしてもらって、各々一五%~三〇%と結構な控除をしてもらった上に、赤字の中小企業には繰り越し控除を五年認めたということでこれは大きいです。ただこれは計算か面倒くさいので。これはどのくらいやられていますでしょうか?

 

──かなりやっています。新聞にも出ていました。適用があるかないか計算していますが  恐らく五社に一社以上は適用しているのではないかと思います。

 

〈片山〉 五社に一社。もう一声みたいな感じですね。

 

──前期比較をして上がっていたら、これは計算したのかとフィードバックしていますから。

──赤字法人が半分なので。

 

〈片山〉 七割位ではないですか? 皆さんのところに来るようなところだったら半分くらいかもしれないですね。

 

 

──そうですね。黒字のところで三社かニ社かの内一社が適用になります。ただ、ニ年前に岡山の加藤勝信先生にお話ししましたけど。当期の法人税額のニ〇%の制限があるんですよ。これが上限になる会社が多いです。今回の中小法人の繰り越し五年間もニ割の枠があるんです。だからほとんど使えないと思います。だから加藤先生に「あれをどうにかしてくれませんか」と言うと「あれは税収の関係があってそうなった」という一言で終わりました。我々が見ているところはニ割で止まってしまうところが多いので、ちょっとしか適用できないです。

──ありがとうございました。先程の住宅ローンの中に子育て世代の規定が初めて出て、これが夫婦のどちらかが四十歳以下の世帯ということで。この点について岸田総理も少子化問題対策として税制大綱の理念にも書いてあるのですが、住宅ローン控除に入れていくというのも最初からお考えなのでしょうか。

 

〈片山〉 これは現状維持ですが、住宅のため景気のためにということで押していて、何か下りる算段として、子ども・子育て支援金で一兆円捻出の話があったじゃないですか。子ども。子育て世代に対するメリットを未曾有のもの・異例のものとして打ち上げたいという発想から出てきた感じです。今になったら、これがあっただけでも良かったというのはあります。

 ですが、要するに社会保障の医療保険に乗っけるものですから、個人によって負担額が変わるのは当たり前で、誰が計算してもわかるもので、五百円とか四百六十三円は平均でしかないです。分かってはいるけどはっきりその内容を言わなかったからそうなってしまった。初めから分かっていたことではありましたけど。徐々にこのようなものをメリットに入れていくということは根本にあって、少しは良かったかなという感じはします。

 

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(中国税制連』2024年5月号(No.72)『特別企画:片山さつき参議院議員に聞く』より)

 

④へ続く

 

広島総合税理士法人