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『特別企画:片山さつき参議院議員に聞く』④

2024/06/14 [FRI]

当事務所の岡本税理士が進行役を務めました『特別企画:片山さつき参議院議員に聞く』の記事が、中国税理士政治連盟の会報『中国税制連』2024年5月号(No.72)に掲載されました。

当HPでも、この記事を4回に渡って掲載します。

第1回

第2回

第3回

・第4回

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賃上げ税制について

 

──賃上げ税制についてお聞きします。今回、中堅企業という枠が初めて設けられましたが広島でニ千人というのは上場企業くらいしかありません。千人とかで設定されなかったのが残念ですが、ニ千人としたことについて何か理由かあるのでしょうか。

 

〈片山〉 昨年十一月に企業の労働生産性が従業員二千人までは規模の拡大とともに向上することが分かったこと、中堅企業による国内技術や人への投資に二千人以下の企業が大きく貢献していることで、こういう枠となりました。

 

──元々、経済産業省の施策の中で中堅企業という枠はあるのですか。

 

〈片山〉そうです。それに地域未来牽引企業というのもあります。広島でも私が昔から存じ上げているような良い会社は中堅未来牽引企業になって、その年の経産大臣の表彰もあります。 大企業ではなく上場もしてないけれど、その地域で技術力も影響力もある企業には頑張ってもらわなければ困るという流れを日本中に作っていきました。「もうちょっとやってもらいたい」という期待感からでしょう。そこまでいくと従前の大企業になって、結局、中堅企業ではなくて大企業というのは総従業員数一万人以上で様々なインセンティブかあり、そこに高い枠、七%などという枠を作って下の中堅と分けたというの思惑があるのだと思います。

 実際に日本製鉄の賃上げ率って今回一四・二%でしょう。USスチール買収のためではあるかなという気はしますけど、三万五千円の賃上げですからすごいですよね。

 

──新聞を読むと上場会社の五%以上を優に上回っていると書いてありました。そういった意味では岸田政権の賃上げ政策というのはうまく進んでいると見ていいのでしょうか。

 

〈片山〉 予想以上に来たのは、上昇率が五%だったら相当ですよね。だけど実際に人が採用できないということなので「どうせならば」ということでしょう。子どもがどんどん減ってしまっているから激烈な競争になっていると本当に言われていました。出生数が八十万人を切り七十七万人に減少したことを考えると、次回は五%とかにしてほしいですね。

 

定額減税について

 

──先程官邸主導の定額減税の話がありました。その中で「減税」ということと「給付」ということの議論は、税調でやることではないのかもしれませんけど。

 

〈片山〉 実際に、税調では「そもそも論」なんかも言うんですよ。政治家同士ですから。「これだったら給付でやったらいい」とか。でも事務負担が大変で、給付の計算や執行も何段階かに分けて、できるだけ正確に給付しようとしたじゃないですか。切り上げて多めに交付するようにして、それが各々いくらになるのかを市町村で決めて。現場は結構ヒィヒィ言っていました。我々も言われます。「もうちょっと単純にできるものにしてください」と。それは言えていると思います。

 

──まだ法案が通ってないのですが、早速、国税庁がニ月にリーフレットを発行しています。住民税もあり、仕方がないのかもしれませんか、企業側に非常に負担を強いるものです。

 

〈片山〉 一九九八年の橋本総理と小渕総理の時に実施された定額減税は一回か恒久化かで揉めた上に、政権の命取りになってしまったから、深入りしない方がいいと思います。今はこれを税で対応したというよりは、六月にちょうど端境期が来るから可処分所得を増やしたと我々は説明したいなと思います。ただ、その割には「税務署と自治体さん、申し訳ない」「それをやらされる企業さん、申し訳ない」ということです。私はものすごく痛感しています。

 

──地方の市町からいろいろな「大変だ」 という話を聞かれますか。

 

〈片山〉 それは、元・地方創生大臣ですからいろいろなところで伺っています。申し訳ないと思います。小さいところも大変だし政令指定都市も大変。支出や消費を喚起するためには、 これからはマイナンバーカードを幅広く利用したいですね。取得率一〇〇%に近いところも出てきているので、限りなく一〇〇%に近づいたら「えいや」で導入して、そこに電子マネーや本人確認のためのアプリを活用したり。来年か再来年にはアプリ化すると言っていますので、アプリだったらさすがにスマホを持っている人はやれるでしょうと思います。おじいちゃんの分はあなたが手伝ってといった感じですね。

 タイ国は既に「クイックペイ」や 「イージーペイ」などを導入していますよ。また、政府が中央銀行のシステムなどを援助しています。この前のコロナの時に給付金を実施しました時、国民七千万人のところ、四千万口座もできてしまいました。やればできるじゃないと。それまでは銀行口座はいいことかないから持たない人が多いと思っていたら、お金が入るとなるとみんな作っちゃったということです。

 

──日本もそうありたいですよね。

 

〈片山〉 次あたりからはそうじゃないですか。何十万円、何百万円給付するわけではないので、ご家庭に七万円、十万円とか、四人家族でも十六万円の減税までならば、マイナンバーカードと口座を紐づけて、そこで「クイックペイ」や 「プロンプトペイ」でいいのではないかと思います。

 この国は先生方 (税理士) や企業の税務関係者で成り立っているんですよ。私も税務署長研修の時にそのように言われてきました。申告納税制度の下、関係法令に基づいて納税額を確定・徴収するシステムとマンパワーが無かったら、これだけの直接税が取れるわけがありません。ヨーロッパの国では、国民総ナンバーを打っても所得税関係の徴収税率が今でも低いため、あのような間接税を徴収しているのです。当然、コストも割り振られますよね。

 今回、電帳法とインボイス制度の導入による初めての申告になりまして、様々な方面からご意見を頂いています。つまり、そういうところにツケを負わせながら、全体の徴税制度を運営しているということです。改善するためには、今回のことを先生方が積極的に分析し考えていくべきです。単に起こっていることを列挙するだけではダメなので、それに対して冷静に客観的に考えて「その負荷はロスじゃないか」とか「これはもうちょっと何かできるんじゃないか」とかを分析し提案すべきではないかという気もしないではないです。

 

 

──続いて定額減税に関する質問ですが、低所得者層についてのいわゆる給付についての問題か新聞に出ていたのですか、これは端数は切り上げになっているのですか。ちょっと違和感があったのですが。

 

〈片山〉 これはかなり早いうちに決めていました。そういう層に痛みがいっているから、できるだけやさしく、やさしくというのは政権の方向で、それは自民党も是認しました。ですが、切り上げ方式をいくらからにするかなど、私たちはそこまでは申し上げていないです。そこは実務に任せたら、これを持ってきましたという感じです。

 

──特に、年金生活者はかなり切り上げになるのではと思います。

 

〈片山〉 ただその場合、意外と資産を持っている年金生活者が切り上げられている可能性はなくはないです。今回の賃上げの効果が五・二八%でも年金がスライドで上がるところは二%台だから、賃上げメリットは現職の方が多いです。それにすごくまだらがあって、例えば今話題のトラック業界など大手五社を筆頭に五次下請けまでありますが、実際のところ五次下請けは荷主から損だけ負わされてあまり上がらないです。その部分を極め切っていないのですが、岸田総理は中小企業対策にも真面目なので、トラックGメンなどを設け内偵させるなど今までやらなかった努力はしています。努力はしていますが全部じゃないんです。だから、その辺の声は相変わらず来ていますね。

 

──今の地方自治体が給付していくのはどのようなプロセスですか。自冶体に任せているのですか。

 

〈片山〉 七月という自治体があるくらいですが、四月までにはというところが多いようですね。

 

──概算計算をして返すところは先に返すということですかね。

 

〈片山〉 そうだと思います。手引きのようなことはしています。レジュメ処理日もやっていますけど、予算的には四月位に先決するか臨時で議決して、三月の議会ではできなかったところが結構ありまして、配り始めるのは早くて四月以降の四、五、六月になります。

 

──山口県で給付金の詐欺がありましたが、返し過ぎるということはないのでしょうか。

 

〈片山〉 あれは完全にネット上の操作の間違いで、まさに海外のスポーツクジに投機してしまったんですね。あれはグレーゾーンです。我々はあれをやるなら国内に取り込んで、国内で 「ここからセーフ、ここからアウト」にしたら、税収がガチっと入る上に海外の方を全てアウトにできるので良いと言っているのですが、まだ民間の関係者が勉強会の中で揉んでいる段階なのです。

 

──心配なのは、先に返すことによって返しすぎることはないかなということです。

 

〈片山〉 それはありますね。ミスのないようにとしか言えません。

 

──お時間も迫って参りました。最後に税理士に対する期待を一言お願いします。

 

〈片山〉 デジタル化が進んでもAIが進化しても、経営者や事業主には税務・会計のアドバイザーが必要です。M&Aや事業再生が増えていく時代、皆さんと一緒に中国地方の中小企業・経済を強くして参りましょう!

 

 

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(中国税制連』2024年5月号(No.72)『特別企画:片山さつき参議院議員に聞く』より)

 

広島総合税理士法人