《所得税法の事業所得の計算で、損失の必要経費算入は出来ないのか?》
誤審ピックと揶揄されたパリ2024オリンピックの総合馬術団体で、初老ジャパン(平均年齢41.5歳)が92年ぶりのメダルを獲得、おめでとうございます。 30歳から40歳で初老であるなら終老税理士と言われるであろう私が、疑問に思っている所得税の事業所得の損失についての、ひとりごとぴっく(見解)に参加してください(終老税理士の誤解ピックでおわるかも?)。
法人税法は別段の定めを必要とせずに、通則規定(法法22③)だけで、損失を損金の額に算入する構成であるのに対し、所得税法では必要経費の通則規定である所得税法37条では損失は除かれ、別段の定めである所得税法51条に基づき損失を必要経費にするとし、必要経費に算入できる損失は所得税法51条に該当する場合に限られる構成となっています。
所得計算における損金(法人税)、必要経費(所得税)の規定の比較
法人税法22条3項 |
所得税法37条1項 |
損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。 |
必要経費に算入すべき金額は、別段の定めが あるものを除き、総収入金額に係る |
①売上原価、完成工事原価その他準ずる原価 |
売上原価、直接要した費用 |
②販売費、一般管理費、その他の費用(債務の 確定しないものを除く) |
販売費、一般管理費 業務について生じた費用(債務の確定しないものを除く) |
③損失の額 |
規定なし ※資産損失の必要経費算入の別段の定め(所法51条)あり |
※資産損失の事業所得の必要経費算入の規定
所得税法51条 |
①事業の用に供される固定資産その他これに準ずる資産で政令で定めるもの(繰延資産。令140)について、 取りこわし、除却、滅失その他の事由により生じた損失の金額は、必要経費に算入する。 |
②貸倒れその他政令で定める事由により生じた損失の金額は必要経費に算入する。 |
③災害又は盗難若しくは横領により居住者の有する山林について生じた損失の金額は、 必要経費に算入する。 |
上記の、所得税法の損失に係る規定によると、所得税法51条で規定される以外の事業活動による損失(例:売掛金を回収した現金の盗難、従業員による売上金の横領等)が発生した場合には、所法51条に該当しないので必要経費に算入できないことになります。
法人税法も所得税法も所得(事業)計算の方式は同じであるのに、法人税法では損失となるものが、所得税法で事業所得の計算上、損失にならないことになります。
個人事業所得者は法人とは違い、消費活動と事業活動の二面性を持っているとしても、所得税法の損失に係る規定は ❛はて?❜
では、所得税法37条でなぜ損失を規定しなかったのかについては、
①損失は一般的に必要経費に含まれないので、損失を必要経費から除く必要からであるとする見解
②所得税法37条では、明文で債務の確定を要求していることから、償却費以外の費用については、債務の確定ないしは債権債務関係の存在を観念しているが、損失は債権債務関係を通常観念し得ないから、損失は必要経費に算入できないとする見解
③事業活動による損失は、所法51条に定めれていない損失であるが、事業所得の計算上その控除を否定する理由がないとし、所法37条で損失を必要経費に算入可能であるとする見解
④所得税法にいう必要経費は、法人税法にいう損金と本質的な差異はない。そうであれば、所法51条の資産損失の範囲に明記されていない、事業用現金に係る損失についても、事業の関連性あるいは必要経費の客観的存在を要件として、所法37条で必要経費の控除が認められるべきであるとする見解
と意見が色々あるようですが、どの見解が正当なのかは?です。
事業活動による損失が法人税では損金に算入されるのに対し、所得税では必要経費に算入できないということでよいのでしょうか、納得できるものではないと思います(雑損控除で対応すればという意見もあるでしょうが、事業用資産の損失に適用できるのか❛はて?❜ )。
(パリ2024オリンピックのスポーツクライミングで身長154cmの森秋彩(もりあい)さんが第一課題のホールドが高すぎて届かなかったためスタート自体がとれないで0点となった。背が届かない設備が用意され競技に参加できなかったことと同じくらいの思い)
パリ2024オリンピックが閉幕して、各種の競技でルール改正の必要性が唱えられていますが、事業所得の損失の必要経費算入規定について、所得税法も法人税法と同様の規定(損失の規定を創設する)に改正することを望むものです。
広島総合税理士法人