最近の新聞でよく目につくようになった記事として「企業の倒産増加」という項目が挙げられます。
コロナ下の2020年以降には、政府の資金繰り支援策の実質無利子・無担保融資「ゼロゼロ融資」で一時的に資金繰りが改善していたものが、コロナ禍が過ぎ去って資金繰りが悪化したことが原因で倒産が増えているとのことです。
私が特に問題と思っているのは、倒産の中でも粉飾決算などが理由の「粉飾倒産」が増えていると事象です。帝国データバンクによると負債額1千万円以上の2024年1~9月の粉飾倒産は前年同期比率28%増の74社でした。調査を始めた2018年以降で最多とのことです。粉飾倒産は、企業が借入金の返済猶予を金融機関に申し入れた際に発覚することが多いです。
粉飾決算はご存じのように「儲かっていない状況を儲かっているように決算書を作成すること」です。
税理士目線から見るとこういったケースには多額の繰越欠損金が存在しており、法人税を払う必要がないのであまり注意を払いません。会計監査を行う公認会計士や監査法人であれば粉飾を見逃した場合には責任は追及されるのは当然ですが、会計監査が義務付けられているのは上場会社や会社法上の大会社(資本金が5億円以上または負債総額が200億円以上の会社)に限定されています。日本全国で約1万3000社しか該当せず、ほとんどの会社においては税理士が決算業務を行っているのが現状です。
クライアントが倒産したくないので粉飾をしているのがわかった場合に税理士としてどう対応するかついては悩ましい問題となります。経営者に対してその処理をやめるよう注意する人は限られた人ではないでしょうか?粉飾処理を是正するように経営者に迫ったとしたら、経営者も倒産したくない気持ちが強く働いているために顧問契約の解除となってしまう可能性が高くなります。
金融機関から見た場合、粉飾倒産がわかった場合その企業の顧問税理士について問題視する場合も聞きますが、税理士サイドからみればそんなことまで責任は持てないというのが本音ではないでしょうか。
広島総合税理士法人