従前記事において、
リースに係る会計基準等が改正されたことをお伝えしました。
前回記事:教えて!法人先生『リース会計基準ってそもそもどう変わるの!?』
その時点では「どう変わるのか?」「誰に影響があるのか?」などに着目して解説してきましたが、
明らかに避けている論点として、「税務はどうなるの?」という点がありました。
2024年12月20日に自民党の令和7年度税制改正大綱が公表され、
そこにサラッとリースに係る記載が下記のように記述されていました。
「リースに関する取引について、次のとおり整備を行う。
① 法人が各事業年度にオペレーティング・リース取引により
その取引の目的となる資産の賃借を行った場合において、
その取引に係る契約に基づきその法人が支払う金額があるときは、
その金額のうち債務の確定した部分の金額は、その確定した日の属する事業年度に損金算入する。
(注1)上記の「オペレーティング・リース取引」とは、
資産の賃貸借のうちリース取引(ファイナンス・リース取引)以外のものをいう。
(注2)上記の支払う金額には、その資産の賃借のために要する費用の額
及びその資産を事業の用に供するために直接要する費用の額を含むものとし、
当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額、
固定資産の取得に要した金額とされるべき費用の額及び繰延資産となる費用の額を除く。」
会計基準の改正のうち、
大きな変更点は、リースの範囲とリースの期間でした。
リースの範囲については、
いままでリースとして処理されなかったものなどが対象になるとしましたが、
オペレーティング・リースも同様であり、
いままで賃貸借処理(支払い時に費用処理)してきたものが、
資産計上(一旦資産計上し、その後減価償却を通じて費用処理)されることとなります。
これが上述の税制改正大綱においては、
「債務の確定した部分の金額は、確定した日の属する事業年度に損金算入する」となっており、
つまり今までの賃貸借処理のままとなり、
会計と税務が泣き別れることが提示されています。
企業会計基準に基づかない中小企業等は、従来のまま変更なく処理できほっと一安心でしょうが、
上場企業等に代表される大企業等は、税務の申告調整が【煩雑】という言葉ではとても足りないくらいの状態になることが想定されます。
粛々と人海戦術で申告調整をしていくのか、
新リースに合わせて対応可能なシステムを導入していくのか、
そもそもオペレーティング・リース取引自体を減らしていくのか(購入に切替)など、
いろんな対策案が考えられます。
新会計基準は2027年4月1日以降開始事業年度から適用となりますので、
あと2年程度の猶予はありますが、あまり時間がないという印象です。
税制改正は現時点で大綱段階であり、
今後も特例等の変更可能性もないわけではないですが、
一旦、方向性は示されていることからすると、
“泣き別れ”という前提に基づいて、対策を進めていく必要がありそうです。
広島総合税理士法人