借主が事務所の内装をリフォームした場合、
借主の会社が、自社のみが使用し、
賃借期間が終了したら自社の資産とならないものを、
自社の資金でリフォームするのだからという理由で、
単純に借主の修繕費としてよいのでしょうか?
色々な問題がありそうです。
まずは、事務所の内装工事をする場合の契約はどうなっているのか、
事務所の賃貸借契約の内容の確認から始めましょう。
1 事務所の内装は誰のものなのか?
①家主所有説
リフォームした内装が家主に帰属するものであれば、
リフォーム費用は、借主から家主に対して贈与したとして、
寄附金、交際費等、繰延資産となるという考えがあります。
②借主所有説
借主の負担で行うリフォームであれば、
事務所の返還時までは、内装部分に限っては借主の自由処分が認められ、
借主に所有権が存在するという考えもあります。
これについて税法の直接の規定はありませんが、
耐用年数通達1-1-3では、
「他人の建物 に対する造作の耐用年数」として、
借主の行った内部造作について、借主が付すべき耐用年数を示しています。
このことから、税法は、借主の減価償却資産として処理することを
示しているという意見もあります。
まずは、事務所の賃貸借契約の内容によって、
上記①(家主所有説)と、②(借主所有説)とに分かれるので、
契約書で不明な場合は、貸主との間で確認が必要です。
一般的には、借主の所有となる契約の場合が多いと思われます。
2 造作とは?内装とは?
『造作』とは、広辞苑によると
「建築内部の仕上材、取付物の総称。
天井・床板・階段・棚・流し・敷居・鴨居・飾り棚の類。また畳・建具の類をいう」こととされています。
造作の耐用年数は、
他人の建物についてなされた造作は見積もった耐用年数により、
建物附属設備になされた造作はその建物附属設備の耐用年数により、
償却することとされています。
『内装』とは、
広辞苑によると「建築物などの、内部の設備・装飾」とされています。
税法は、耐用年数の適用上、
建物附属設備として、「店用簡易装備」があり、次のように定めています。
「店用簡易装備とは、主として小売店舗等に取り付けられる装飾を兼ねた造作、
陳列棚及びカウンター等で短期間内に取替えが見込まれるものをいう。」(耐用年数通達2-2-6)
これからすると、内装も造作の一つとされ、
その内容によっては、建物、建物附属設備とに区分されるということです。
3 リフォーム費用は修繕費か?(内装が借主の所有の場合)
固定資産の修理、改良等のために支出する費用は、
①維持費
②取替補修費
③改造費
④増設費 などがあります。
これらの費用が資本的支出(使用可能期間を延長させる。価値を増加させる支出。)になる場合、
その費用は損金の額に算入できません。
減価償却資産として減価償却費を耐用年数に渡って
損金の額に算入していくことになります。
修繕費とは、固定資産の修理、改良等のために支出した費用のうち、
固定資産の通常の維持管理のため、
又は固定資産の機能等が低下した箇所を元の状態に修復するためのものをいい、
その費用は一時に損金の額に算入されます。
リフォーム費用といっても、
その内容によって、
資本的支出になるか、修繕費になるかを判断する必要があるということです。
(注)内装が家主に帰属するのであれば、家主が資産の受贈益をたてて受入れし、
10万円以上のものであれば家主が減価償却をしていくことになります。
借主は寄附金、交際費等、繰延資産などで処理することになります。
広島総合税理士法人