近年、負の遺産という言葉をよく耳にする。
負の遺産とは、文字通りに解すれば、
「相続財産のうちの負債」ということであるが、
ここでは、資産ではあるが、
相続人にとって利用価値がないもの、
あるいは利用するには困難が伴うことなどから、
しいて相続したくない財産をいう。
負の遺産の代表例は、
相続人が利用していない空家や
主として農村部に所在する利用していない土地などがある。
総務省によれば、
現在、国内の住宅総数に占める空家の割合は
過去最高の13.6%であり増加の一途をたどっている。
ちなみに、広島県の空家の割合は全国平均を上回る15.1%となっている。
また、利用していない土地の中には、
現所有者不明の土地が多く含まれており、
その面積は約410万ヘクタールで、
九州全土の367万ヘクタールを大きく上回る状況となっている。
現所有者不明の土地も増加の一途をたどっている。
空家となった要因は、解体費用を要する、
空地にすれば固定資産税が増える、
貸家が老朽化すれば借り手が見つかりにくい、
売却が困難であることなどが挙げられる。
また、現所有者不明の土地は、
登記費用がかかるため相続登記しないまま年月が経過して、
所有者の把握が困難となっていることなどが挙げられる。
これらの、空家や利用していない土地の多くは、
負の遺産から発生したもので、
倒壊や放火、環境衛生や防犯上の問題、
公共事業の妨げになっているなど、
深刻な社会問題となっている。
この問題解消のための施策が講じられているものの、
一方で私有財産の保護といったこともあり、
抜本的な解決策に至っていないのが現状であろう。
一長一短に解決できる問題ではないが、
地方の活性化、地方での雇用確保、
農業だけでも生活できる施策等を講じて、
地方定住を促進していくことが問題解決の原点ではないか。
広島総合税理士法人