疑問にお答えする前に、まずは会計区分について整理してみましょう。
平成20年公益法人会計基準の総則4において、「公益法人は、法令の要請等により、必要と認めた場合には会計区分を設けなければならない」と定められています。
一般社団・財団法人は、法人法第119条で「一般社団法人の会計は、その行う事業に応じて、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。」の規定のみです。
(公益認定等ガイドライン)(平成20年4月11日、内閣府公益認定当委員会)Ⅰ-18認定法第19条関係(収益事業等の区分経理)に次のように示されています。
(1)認定法第19条の「各収益事業等ごとに特別の会計として経理する」際の事業単位については、当該法人の収益事業等のうち、まず①収益事業と②その他の事業を区分し、次に必要に応じて、事業の内容、設備・人員、市場棟により、さらに区分する。
(2)解散書類の作成について、①損益計算書(正味財産増減計算書)は、内訳表において会計を公益目的事業に関する会計(公益目的事業会計)、収益事業等に関する会計(収益事業等会計)及び管理業務やその他の法人全般に係る事項(公益目的事業や収益事業等に属さない事項)に関する会計(法人会計)の三つに区分し、更に上記(1)の区分に応じて収益事業等ごとに表示する。内訳表においては公益目的事業も事業ごとに表示する。以下省略。
上記の、事例として公益法人会計基準並びに公益法人会計基準の運用指針(平成20年4月11日)に内訳表の様式(2-3)が示されています。
2.移行法人の場合
整備法施行規則第42条2項に「整備法第127条第3項の規定により提出する損益計算書は、次に掲げる区分を設けて表示するとともに、各区分において実施事業に係る額を明らかにしなければならない。この場合において、各区分は、適当な項目に細分することができる。」と規定されています。
さらに、公益認定等ガイドラインⅡ-4移行法人の計算書類について(整備法第42条関係)に、「移行法人が行政庁に提出する計算書類の作成について、損益計算書(正味財産増減計算書)は、内訳表において、実施事業等に関する会計(実施事業等会計)を多と区分し、さらに実施事業等ごとに表示する。整備法規則第31条第5号の{収支予算書}の作成も同様とする。」とあります。
運用指針において正味財産増減計算書の様式として様式(2-4)が示されています。
これらの区分は、認定法人であれば、財務三原則(収支相償、公益目的事業比率、遊休財産比率)の算定上不可欠のものですし、公益目的支出計画の実施報告に不可欠なものです。この結果、事業区分が多岐にわたる法人においては、会計処理が複雑となっている事例が多発しています。この複雑さの例は、日本公認会計士協会の非営利法人委員会研究資料第4号(平成23年5月13日)「貸借対照表内訳表及び正味財産増減計算書内訳表の作成と会計処理につて」に詳報されています。
以上の様に会計区分が義務付けされているため、「複数の会計区分に共通に発生する収益及び費用についての会計上の取扱い」が問題となります。この詳細は次回に期待ください。
広島総合税理士法人